2005 Fiscal Year Annual Research Report
施設介護サービスの提供主体に対する適切な規律づけに関する研究
Project/Area Number |
16330047
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岸田 研作 岡山大学, 経済学部, 助教授 (30346407)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
知野 哲郎 岡山大学, 経済学部, 教授 (40171938)
藤井 大児 岡山大学, 経済学部, 助教授 (50346409)
谷垣 静子 鳥取大学, 医学部・保健学科, 教授 (80263143)
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Keywords | 介護保険 / グループホーム / 介護保険料 |
Research Abstract |
グループホームは、認知症の高齢者が少人数で家庭的な雰囲気の介護を受けながら生活する施設である。認知症介護の切り札とも呼ばれ近年都市部を中心に急速に増加している。しかし、入居者は認知症患者であり、外部の目が届きにくいホーム内で介護が行われているため、介護内容に問題があっても表面化しにくい。そのためサービスの供給主体に適切な規律付けを行う必要がある。国内外の施設介護サービスに関する先行研究の大半は、営利と非営利のサービス内容を比較するものであるが、一定の結論は得られておらず、経営主体による差が生じる理由についても充分な解釈が行えていない。そこで、本研究では、経済学の理論モデルから演繹的に推論を行うのではなく、実際に多くのホームを観察することで、サービスの質に差が生じる要因を明らかにすることを試みた。我々は、岡山市のグループホームの第三者評価委員の研修を受け、評価委員として県下のホームをまわった。観察調査から得られた結論は、以下のようにまとめられる。1.経営主体よりも管理者の素質がサービスの質を決めている。2.模範となるホームを実際に見学した経験がある管理者は、良い介護について具体的なイメージを持ち、あらゆる場面で入居者中心の生活を確立する努力が見られる。3.母体が営利でもホームの経営には非営利的な精神である経営者が存在し、実際に良いサービスを提供していることもある。従って、一概に営利の経営主体が悪いという結論は導けない。4.入居者中心の生活を組み立てているホームの入居者のQOLは高いように思われるが、ADLの維持という面から良いサービスが提供されているかは不明である。 現在、都市部を中心に施設介護サービスは不足している。しかし、施設介護サービスは在宅サービスよりも費用が高いので、施設介護サービスを増やすことは介護保険料を増加させることになる。今後、適切に施設介護サービスを供給するには、第一号被保険者の介護保険料の負担感に影響する要因を明らかにする必要がある。我々は、山陰地方のA市の介護保険課の協力を得て、介護保険料の負担感に影響する要因を分析した。従属変数を介護保険料の負担感、独立変数を主観的な要介護状態になる可能性と保険料負担能力とする回帰分析を行った。主観的認知の指標は、経済学では内生変数として扱われる。そこで、本稿は操作変数法を用いて推定した。結果は、操作変数法を使う必要性を示し、リスクを高く評価する者、保険料段階が低い者ほど、保険料負担を妥当だと考える傾向があった。このことは、連帯を基礎とするといわれる社会保険の加入者の保険料負担感に対する判断が、民間保険と同じであることを示す。 都老研をはじめとする幾つかの先行研究を参考に、特別養護老人ホームで働く介護職員の満足度と職場環境の関係を明らかにするための調査を行った。
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