2006 Fiscal Year Annual Research Report
介護市場における情報の非対称性がサービスの質と量に及ぼす効果についての経済分析
Project/Area Number |
16330053
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Research Institution | MEIJO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
鎌田 繁則 名城大学, 都市情報学部, 教授 (70214509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤木 博文 名城大学, 都市情報学部, 助教授 (30254270)
稲垣 秀夫 四日市大学, 経済学部, 教授 (70159937)
森 徹 名古屋市立大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (60134160)
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Keywords | 第三者評価制度 / 顧客満足度 / 誇大広告 / 過小広告 |
Research Abstract |
本研究の全体テーマは、介護保険によって市場化された介護サービスの供給において、サービス事業者等に関する情報をほとんど持たず、また、それらが提供するサービスの質を正確に評価できない消費者(要介護者)が市場に一定割合存在するとき、それでも市場に出回る介護サービスの質は十分高い水準が確保されるか否かについての分析であり、また、それらサービスの質を正確に評価できない消費者たちが市場から排除されること(未利用者問題)がないのかについての研究であった。 もしそうした現象が発生する可能性があるのなら、理論的にその因果関係を明らかにするだけでなく、実験経済学的手法をもちいて、その状態を再現することが本研究の第1テーマであり、そうした因果関係を取り除くための政策を導出し、やはり実験経済学的手法を用いてその有効性を実証することが第2テーマであった。 さて、平成18年度は研究期間の最終年度であり、2期目(平成17年度)までに明らかになった理論的考察に対して、実験経済学的手法を駆使した実証研究を行った。特に、第2テーマである介護サービス市場の情報の非対称性を解消、ないしは緩和する具体的政策として、顧客満足度(CS)分析にもとづく第三者評価制度を提唱してきた。 CS分析を利用した第三者評価制度は、既に国や一部の公共団体、自治体で導入されているが、顧客満足度情報が果たして本当に介護サービスの消費者行動に本当に影響を及ぼすのか、そして、影響を及ぼすのなら、どんな情報が介護サービスの質や量に好影響をもたらすのか等が研究課題であった。しかし、これらの諸課題のうち、限られた研究期間の中で我々が最終的に明らかにできた部分は、「事業者が誇大広告や過小広告など故意に歪めた情報を利用者に流布させることによって、市場に出回るサービスの量を増やすことが可能であり、しかも、この場合にも顧客満足度は必ずしも悪化しない」ことだけであった。この結論は、理論上の先験的帰結ではなく、実験によって得られた現実的結果であり、予期しなかった結果であることから、現在、分析結果を吟味中である。 従って、本研究の助成期間はこれで終了するものの、もう少し時間をかけてこの分析結果を論文化するとともに、本研究を踏まえて残りの諸課題も引き続き研究を続けたい。
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