2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16330060
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
仁科 一彦 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (30094311)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小谷 眞一 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10025463)
吉本 健一 大阪大学, 大学院・高等司法研究科, 教授 (80031863)
長井 英生 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (70110848)
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Keywords | デリバティブズ / リスク・シェアリング / パレート改善 / 確率解析 / 幾何ブラウン運動 / 取引デザイン / 情報公開ルール / 市場管理機構 |
Research Abstract |
本研究の2年度の成果を、それぞれのグループの研究目的を基準にして報告する。確率・数学グループの成果はデリバティブズの価格形成に関する標準的な前提である確率過程の特性を再検討し、とくにマルチンゲールの重要性を確認したことにある。よく知られているように、マルテンゲール性は市場における無裁定条件と密接な関係を持つが、これまで考えられていた程度以上に重なる部分(積集合もしくは必要十分関係と言える)が強いことを明らかにしている。S.Kotaniはこの意味で重要な貢献である。H.Nagaiはさらに、情報が不完全な場合にまで議論を発展させる可能性を開いた。これらの成果は、同グループのテーマである、デリバティブズの価格形成を明らかにできるメカニズムの開発に大きく貢献していると考えられる。経済学グループの成果は、デリバティブズが標準的な取引手段として存在する経済では、従来のような間接金融対直接金融という分類や評価が、必ずしも意味を持たないことを示したことである。経済厚生を高める金融システムを追求する場合に、デリバティブズは不可欠の手段であり、そこでは、直接金融のみが市場メカニズムの利点を享受するとは限らない。従来非効率と考えられていた銀行を仲介するシステムも存在理由を持つのである。ファイナンスの理論のみならずゲーム理論のフレームワークも導入して、包括的な検討を展開したことはこれからの研究に強い刺激を与えるものと期待される。法学グループの成果は、吉本(2),(3)に象徴的に現れているように、既存の金融契約や各種の証券のみならず、たとえばポイズン・ピルのように新しい形態をまとって導入された契約が、基本的にデリバティブズの特性を持つ内容であることを、わが国の制度に立脚して明らかにしたことである。この命題は、ファイナンス理論では既によく知られていることではあるが、関連法律の枠の中で、しかもわが国で昨年修正された会社法をベースにした議論展開は、十分意義のある内容である。本研究全体の中心テーマである、デリバティブ市場の設計と管理に関する理論的かつ体系的な知見の提供に大きく寄与すると思われる。 また、2005年10月には、デリバティブズ市場の設計ではわが国より先行しているEUの実情を観察し、Mr.Glausを介しての資料収集やインタビューは、次年度からの研究における問題意識を高揚させる効果を持つものであった。
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Research Products
(7 results)