2005 Fiscal Year Annual Research Report
欧米日のグローバル・ベンチャー企業の組織能力形成プロセスに関する比較研究
Project/Area Number |
16330077
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高井 透 日本大学, 商学部, 教授 (60255247)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺本 義也 早稲田大学, 大学院・アジア太平洋研究科, 教授 (30062178)
神田 良 明治学院大学, 経済学部, 教授 (90153030)
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Keywords | ボーン・グローバル / 戦略 / 持続的競争優位性 / グローバル戦略 / コンピタンス / 内部資源 / 外部資源 / 提携 |
Research Abstract |
本年度は、アンケート調査を実施した。その結果、グローバルに事業展開しているベンチャー企業の戦略特性は、単一の技術や製品で差別化するというよりは、小さな差別化を事業の仕組みに仕上げることで、持続的競争優位性を構築しているということである。必ずしも、画期的な技術のみで持続的競争優位性を構築しているわけではない。また、中核的な強みを意識し、基軸を外れない投資を行いながら、常にグローバルな戦略展開を意図しているということも理解できた。 特定の技術に強いベンチャー企業は、内部資源の開発にこだわり、外部資源をうまく取り込めないケースもあるが、アンケート対象企業は、提携も重要な戦略の一手段として位置づけているようだ。つまり、内部資源と外部資源を柔軟にリンクする戦略を展開していると言える。 それでは、その戦略特性を生み出すコンピタンスは、いかなる要因から形成されるのか。内部コンピタンスとしては、6つの因子を見いだした。それぞれの因子は人、組織学習、技術、組織に関係する項目から構成されていた。とりわけ、技術に関連する因子を多く抽出した。中堅・ベンチャー企業の持続的競争優位性の核は、やはり技術をベースにしていると考えられる。しかも、そのコアとなる技術的な強みは、内部化してブラックボックス化するという技術戦略をとっている。 しかし、コア技術も企業に長期的に競争優位性をもたらしてくれるわけではない。強みに安穏としては、いつの間にか自社の競争優位性が失われることになる。そのため、アンケート企業は、企業の風通しをよくするために組織内コミュニケーションを活発に行い、企業規模の拡大に伴う官僚化を回避している。さらには、成功体験や事業の失敗などの要因を分析する組織学習を重視し、そして、中堅・ベンチャー企業の最大の強みである企業家精神を停滞させないために、失敗を許容したり、個人の自由裁量を大きくしているようだ。 それに対して外部コンピタンスでは、7つの因子を見いだした。7つの因子に共通しているのは関係性ということである。つまり、競争、顧客の対応に対して、どのような関係性を構築していくかということである。顧客に対しては、単に需要を獲得する利益の源泉としてではなく、明日の競争優位性につながるような関係を構築していこうという姿勢がうかがえる。競争でも、単に競争相手と競うというだけではなく、その競争を通じていかにコンピタンスを高めるかということを意図している。換言するならば、競争を避けるのではなく、競争を通じてコンピタンスを高めているとも言える。
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Research Products
(3 results)