2006 Fiscal Year Annual Research Report
欧米日のグローバル・ベンチャー企業の組織能力形成プロセスに関する比較研究
Project/Area Number |
16330077
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高井 透 日本大学, 商学部, 教授 (60255247)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺本 義也 早稲田大学, 大学院・アジア太平洋研究科, 教授 (30062178)
神田 良 明治学院大学, 経済学部, 教授 (90153030)
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Keywords | ボーン・グローバル / 戦略 / コンピタンス / 差別化 / 競争優位 / 持続的競争優位性 / 組織学習 / グローバル |
Research Abstract |
事例ならびにアンケート調査から導き出された本研究の主要なリサーチ・クエスチョンであるグローバル・ベンチャー企業の戦略行動特性と持続的競争優位性に関するインプリケーションは下記のようにまとめられる。 (1)行動を通じて学習を行い、戦略をリファインしていく。つまり、アクションによって問題意識が深くなり、問題意識がまたアクションを誘発するような関係を環境との間に構築する。 (2)顧客を単に取引の対象としてではなく、学習の対象として位置づける。学習の対象として位置づけても、顧客の声にすべて迎合するわけではない。常に、コンピタンスに照らして顧客の声を取捨選択する。つまり、自社でできるものと、できないものを明確にする。しかし、できるものについては、できる限り難しい顧客要求に対応する。 (3)顧客の要求が、自社のコンピタンスを高度化することにつながるのであれば、経済的な観点を多少度外視してもその要求に取り組む。つまり、明日の優位性につながる資源を蓄積していくためには、一見無駄にみえる投資も行うことで資源の溜めを創り出す。しかし、その投資は、常にコア事業の領域に連動するように行われる。 (4)小さな強みを大事にする。持続的競争優位性を創るためには、一つ一つの強みはそんなに飛び抜けてなくても、小さな差別化が一つのシステムとして機能することで、大きな差別化を生み出すようにする。競争企業は、一つ一つの強みは認識できても、どのようにそれらの強みが連動しているのかということを把握するのは困難である。つまり、小さな差別化を複数持つことで、競合企業は成功の因果関係を特定化できなくなる。 (5)コアの強みを連続的に変革していく。コアの強みを変えていくためには、自らのコンピンタンスを否定することもいとわない。そして、変革を促進するためには、さまざまなテンションを生み出すような課題を組織に与えていくことである。しかも、そのような課題は、一方を達成すれば他方は実現できないといったような、トレードオフが生じることが重要である。というのも、難しい課題は組織の心理的エネルギーを高め、組織のフォーカスを絞り込ませることになるからである。 (6)このような変革を誘発するさまざまな施策を実行に移すためには、常にコンピタンスを客観視する能力が要求されることになる。そして、その客観性を維持する上で重要なのが空間(グローバル化)と顧客関係の多様性である。つまり、空間や顧客関係の多様性が高まることで、持続的成長を阻害する組織慣性が打破されることになるからである。
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Research Products
(4 results)