2006 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスにおける医療・福祉サービス連携による質確保と予算管理システムに関する研究
Project/Area Number |
16330123
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
杉崎 千洋 島根大学, 法文学部, 助教授 (60314613)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 達也 大阪府立大学, 人間社会学部, 助教授 (30320419)
金子 努 県立広島大学, 保健福祉学部, 教授 (70316131)
児島 美都子 東京福祉大学, 大学院・社会福祉学研究科, 教授 (50295945)
前田 美也子 武庫川女子大学, 文学部, 助教授 (50309027)
中村 明美 武庫川女子大学, 文学部, 講師 (20390180)
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Keywords | 中間ケア / 医療と社会ケア・社会サービス / 統合・連携 / イングランド / 退院遅延 / アウトカム / ケアトラスト / ソーシャルクオリティ |
Research Abstract |
平成18年度は、本研究の最終年度であることから、過去3年間のイギリス(イングランド)における中間ケア(Intermediate Care)と関連政策およびサービスに関する総合的研究のまとめを行い、成果物を出版した。 1中間ケアは、直接には膨大な入院待機、退院遅延の解消策の1つとして政策化された。最初に提案されたのは、NHSプラン(2000年)、具体化されたのは「全国高齢者のためのサービスの枠組み」(2001年)である。 2レセスター大学などによる中間ケア評価研究によると、中間ケアのサービスモデルの中で最も多く活用されているのはDedicated IC Bedsである。施設入所べの高いニーズがあり、入所・通所・在宅ケアの組み合わせによる混合型、マルチ対応型の12のサービスモデルがある。中間ケアの強みは、利用者、スタッフなどの満足度の高さであり、弱点は、力量、全体システムの運用、サービス開発と供給問題、である。リーズ大学の中間ケア調査研究報告書は、中間ケアの成果の評価の難しさを指摘している。例えば、早期退院が実現してもその結果がその退院した本人の生活、さらには人生にとってどういう意味があるかは別であるである。 3ソーシャルワーカーは、中間ケアの多専門職種の一員として、シングルアセスメントや、ネットワーク活動、チームワークに参加している。ニゲル・ホーナーらは、こうした働きを「ソーシャルサービスの近代化」に応える「新しいチャレンジである」と述べている。 4医療と社会ケアを統合する試みとして登場したケアトラストも、初期の8地域以上に増えない。その要因として双方の文化の差があげられるが、これには治療と予防の統合をうたったNHSにおいてグループプラクティスの発展にもかかわらず保健センターが実質的に頓挫した意味が大きいのではあるまいか。 5高齢者のホスピス緩和ケアが構築される条件は、次の3つである。(1)病院と在宅ケア、ホスピスがネットワーク化されており、緊急時などに、適切な場所に入所・入院できるシステム構築。(2)生活の場が変化しても、継続されたケアマネジメントを実施。(3)院内専門緩和ケアチームスタッフが、コミュニティでホスピス緩和ケアを支える。 6ソーシャルクオリティは、個人の自己実現と集団所属という両極の欲求を組み込み、かつ、システム統合と社会的結束を目指す。生活の質の考え方よりも広がりを持っており、最低水準を越えて可能性を伸ばすことを志向する。ただし、完成された概念ではなく、中間ケアとのかかわりを考察する上でも、今後より深められる必要がある。 7総じて、中間ケアは、問題はあるが、医療と社会ケアをつなぎ、入院待機や退院遅延の問題を解決するには有効である。わが国において、医療と社会福祉・介護の連携を促進させるには、こうした政策的対応が必要である。
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