2005 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本の慈善事業の特質とその現代的変容に関する研究-公共性の変化を中心に-
Project/Area Number |
16330124
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Research Institution | BUKKYO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
池本 美和子 佛教大学, 社会福祉学部, 助教授 (90308932)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 正治 久留米大学, 文学部, 教授 (20090201)
細井 勇 福岡県立大学, 人間社会学部, 教授 (70190204)
池田 敬正 四天王寺国際仏教大学, 人文社会学部, 教授 (00071209)
今井 小の実 大阪体育大学, 健康福祉学部, 助教授 (20331770)
杉山 博昭 長崎純心大学, 人文学部, 助教授 (20270035)
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Keywords | 慈善事業 / 近代 / 共同 / 地域社会 / 公共 / 国家主義 / 自由 / 救済 |
Research Abstract |
本年度は、前年度において課題となった慈善事業をめぐる共同性の実態とその変化を中心に分析を進め、近代から現代にかけての変容の意味を検討した。 ・5月「宗教的救済とその現代的変容-石井十次および岡山孤児院史研究を中心に-」(細井報告) 「真宗教団における『慈善』の受容と展開-大谷派慈善協会を素材として-」(菊池報告) ・7月「近代日本における慈善事業と地域相扶(公共救済)の特質およびその現代的変容をめぐって-大阪地域と博愛社をめぐって-」(水上報告) 「感化教育・少年教護分野における官・公・私の問題をめぐって」(藤原報告) ・8月「育児事業の創設と慈善思想 山口県」(杉山報告) ・9月合宿「日本の近世から近代への『公共性』の形成と当道組織」(畠中報告)、「慈恵救済資金の動向」(山本報告)、「明治期石川県下の児童保護状況」(元村報告)「社会福祉形成における公論の役割」(田中報告)「母子保護問題」(今井報告) ・11月「京都平安徳義会の実践」(林報告)、「松江育児院の創設」(小池報告) ・2月全体の検討とまとめ(報告書のほか研究書<非売品>刊行にむけた編集会議) 明治30年代以降に量的拡大をみせていくこととなる慈善事業は、その財源確保を地域に限定されない慈善会による寄付に求めていくようになるが、児童を巻き込む寄付方式への批判とともに再び地域社会の共同に再編されていくようになる。あわせて慈善事業は明治末から府県の慈恵救済基金、内務省の奨励助成、自治体の委託料等による公的資金を受けるようになり、財源確保の安定を求めて公的支援への依存を高めていく。それは国家(官)が要請する公共の担い手としての役割へと変貌することと歩みを同じくするものであった。この変化は、国家主導による社会福祉への変容を示すが、近代からのパターナリズムの拡大であって、一部の公論が示した救済の民主主義的編成にもとづく現代化ではなかった。日露戦争後、慈善事業は前近代性を残す地域社会の共同のありかたをあらたな公共へと育成する期待もかけられていくのであって、明治20年代からすでにその自律性の確保は極めて難しい状況に置かれていたことが明らかとなった。
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Research Products
(4 results)