2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16330129
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鄭 仁豪 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 助教授 (80265529)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
四日市 章 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (20230823)
中山 哲志 東京成徳大学, 人文学部, 教授 (80327262)
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Keywords | 聴覚障害児 / 眼球運動 / 記憶課題 / 視覚的イメージ情報 / 記憶方略 / 再生 |
Research Abstract |
平成17年度には、聴覚障害児の視覚的イメージ情報の記憶の特徴を検討する課題を遂行した。 具体的には、文字情報(単語)とイメージ情報(絵)の2つの視覚的イメージ情報の記憶の課題を取り上げ、再生の方略と眼球運動の側面から、健聴学生と同等の言語力を有する聴覚障害児の記憶の特徴を、同年齢の健聴児との比較を通して明らかにした。 被験児は、聾学校小学部3年生9名と中学部1年生9名の計18名の聴覚障害児と、小学校3年生2名と中学校1年生2名の計4名の健聴児であった。聴覚障害児は、平均聴力レベル79〜125dBの学年相当の言語力を有する先天性聴覚障害であった。健聴学生も学年相当の言語力を有していた。記憶課題は、それぞれ24の項目からなる文字リストと絵であった。被験児は、なるべく多くの事項を覚えるように教示され、そのときの眼球運動とその後の再生が測定・分析された。眼球運動は、非接触型眼球運動装置TalkEye II(竹井機器工業株式会社)を用いて、停留位置、停留点数、停留時間が測定された。 実験の結果、聴覚障害児の再生は、健聴児と同様に、学年進行に伴い、再生頻度が増加する発達傾向が示されること、しかしながら、健聴児と異なり、高学年では音韻的符号化より、視覚的符号化様式をより多く用いること、眼球運動の分析では、聴覚障害児は、文字とイメージといったいずれの記憶課題においても、学年進行に伴い、注視点が減少し、平均注視時間が増加する発達傾向を示すものの、健聴児とは異なり、全般的に、短い平均注視時間を有する注視点を多用する方略を用いることが示された。聴覚障害児の記憶方略においては、長い注視時間を用いて記憶したり、時間系列を用いて記憶したりする方略は用いないこと、しかしながら、記憶の際に、記憶しようとするものや内容における意味的カテゴリーを積極的に使って記憶する方略が確認された。 このことから、聴覚障害児における視覚的イメージ情報の記憶は、おおむね健聴児と同様の発達傾向を示すものの、その際の認知処理を反映する記憶の方略においては、健聴児とは少々異なる側面を有することが確認できた。
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