2006 Fiscal Year Annual Research Report
強相間電子系における光励起状態の位相緩和ダイナミクス
Project/Area Number |
16340085
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩井 伸一郎 東北大学, 大学院理学研究科, 助教授 (60356524)
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Keywords | 強相関電子系 / 光誘起相転移 / 位相緩和 / モット絶縁体 / 電荷秩序 |
Research Abstract |
前年度までに、2パルス型縮退4光波混合によって、一次元モット絶縁体[Ni(chxn)_2Br]Br_2において光励起状態の位相緩和ダイナミクスを調べてきた。これまでに明らかになったことは、以下の2点である。i)強励起下では、弱励起の場合よりも顕著(約一桁)に遅い成分(〜6ps)が現れる。ii)遅い成分の温度依存性は、単純な光学フォノンとの相互作用では説明できない。本年度は、この遅い成分の温度依存性をさらに詳しく調べた。 強励起下における温度変化は、a)最低温では観測されないものの、20-30Kで現れ、100K以下で高速化するサブピコ秒の高速成分と、b)100K以上で高速化する数psの成分に分けることができる。b)が、光学型格子振動との相互作用によって説明できるのに対し、a)は、磁化の温度変化とよく対応していることから、スピン自由度との関係が強く示唆される。さらに、b)に関しても、弱励起において観測される格子振動との相互作用と比較して、関与している格子振動のエネルギーは同一であるものの、結合の強さを表すパラメータは、一桁程度小さく、格子との相互作用の仕方は大きく異なっていることが示される。これらの結果は、以下のことを示す 1)強励起によって形成されるホロンダブロンクラスターは、格子振動、マグノンのいずれによっても散乱を受ける、2)格子振動との相互作用においては、単独のホロンダブロン励起子よりも遥かに小さな散乱しか受けない。3)その結果、マグノン散乱による効果が観測されるようになる。また、前年度から開始した、二次元有機伝導体の研究においては、極めて弱い光においても、光誘起相転移が高効率(200分子/photon)に起こることを始めて明らかにした。(Iwai et al.Phys.Rev.Lett.98,97402(2007))。
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Research Products
(1 results)