2006 Fiscal Year Annual Research Report
強相関電子系における超高速光スイッチング現象の開拓
Project/Area Number |
16340086
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 博 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (40201991)
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Keywords | 強相関電子系 / 光物性 / 強相関エレクトロニクス / 光スイッチ / 磁性 |
Research Abstract |
電荷密度波相にある一次元ヨウ素架橋白金錯体において、フェムト秒ポンププローブ分光測定を行った。その結果、光励起によって、電荷密度波相が融解しモットハバード相に転換すること、その転換効率が非常に高いこと(一光子あたり約70白金サイト)が明らかとなった。この転移のダイナミクスを詳細に調べたところ、光励起後瞬時に多重電荷移動過程によって電荷密度波が融解し、それに引き続いてヨウ素イオンの変位が解消されることがわかった。この変位の解消に伴って顕著なコヒーレント振動が観測された。以上の結果は、この光誘起相転移には、電荷密度波状態から金属状態への転換することがわかった。すなわち、この物質では、電荷密度波、モットハバード、金属の三相関の相転移が可能であることが実証された。 配位子にアルキル鎖を導入した一次元臭素架橋パラジウム錯体において、偏光反射スペクトルおよびラマン散乱スペクトルの温度変化を詳細に調べた。その結果、温度を低下すると、約200Kを境にして、電荷密度波状態からモットハバード状態に転移することが見出された。一次元鎖方向の格子定数の温度変化を考慮すると、この転移が、アルキル鎖間のファンデルワールスカ(ファスナー効果)によって臭素とパラジウムの間隔が減少することに起因していることがわかった。次に、この物質において、フェムト秒ポンププローブ分光測定を行い、光誘起相転移の探索を行った。その結果、電荷密度波相は、光励起によってその秩序が融解し、モットハバード相へ高速に転移することが明らかとなった。この物質は、モットハバード相から電荷密度波相への逆方向への光誘起相転移などの可能性も期待される非常に興味深い系であることが示された。
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Research Products
(23 results)