2006 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属酸化物強相関電子系における軌道自由度が重要な量子物性の研究
Project/Area Number |
16340102
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 正行 名古屋大学, 大学院理学研究科, 教授 (90176363)
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Keywords | 軌道自由度 / 量子物性 / 遷移金属酸化物 / 強相関電子系 / NMR |
Research Abstract |
3d遷移金属酸化物強相関電子系においては、3d電子が持つ軌道自由度が、単独で軌道秩序、軌道揺らぎ、軌道波などの特異な軌道物性を発現するとともに、他の自由度と複合して新奇な物性を発現することが期待される。本年度は、軌道自由度が前面に現れないものの、物性発現の起源となる量子物性について研究を行った。具体的には、バナジウム酸化物β-Na_<0.33>V_2O_5とη-Na_<1.286>V_2O_5を主な研究対象とした。β-Na_<0.33>V_2O_5は、242KでNa原子の秩序無秩序転移、135Kで電荷秩序を伴う金属絶縁体転移を起こし、さらに、圧力を加えると電荷秩序が抑制され、約8GPaの高圧下で超伝導が現れ、その発現機構に興味が持たれている。この系の物性においては、電荷の自由度が重要で、従来、金属絶縁体転移によってV^<4+>とV^<5+>の電荷秩序が生じると考えられていた。単結晶試料を用いたV核とNa核の詳細なNMR測定から、金属相の電子構造は、軌道秩序のために3つの梯子鎖が弱く結合した擬一次元構造をとり、各バナジウムサイトで均一な電子分布を持つが、金属絶縁体転移によって、b軸方向に3倍周期で非磁性のV^<5+>が配列した特異な電荷の不均一化が起きることを明らかにした。さらに、V核とNa核の核スピン・格子緩和率の測定から、Na原子無秩序金属相、Na原子秩序金属相、電荷不均一絶縁体相のスピン・ダイナミクスを調べ、特に、Na原子の秩序無秩序転移が、この系の動的な磁気的性質に大きな影響を与えることを明らかにした。一方、η-Na<1.286>V_2O_5は、特異な幾何学的構造に起因すると考えられるスピン・ギャップ的振る舞いを示し、その起源に興味が持たれている。V核のナイト・シフトの測定から、Vサイトの局所帯磁率は、サイトによって異なったギャップ・エネルギーを持ったスピン・ギャップ的振る舞いを示すことを明らかにした。これは、結晶場による3d軌道の軌道秩序によって支配された交換相互作用が、数種類存在することに起因すると考えられる。
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Research Products
(9 results)