2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16340110
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
辻 和彦 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (10114563)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 文野 慶應義塾大学, 理工学部, 助手 (20424195)
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Keywords | 液体 / 高圧力 / 相転移 / 構造 / 放射光 / X線回折 |
Research Abstract |
本研究は、液体の構造と電気的性質の圧力変化を、種々の結合をもつ液体金属・半導体について系統的に調べ、圧力誘起の相転移の様相が結晶とどのように違うのか、転移後の構造がどのように異なるのか、また転移に伴って物性がどのように変化するかを調べることを目的とし、高圧力下の実験を行った。 X線回折実験は、放射光とマルチアンビル型高圧力発生装置を用いてエネルギー分散法により行った。液体AgIにおいて加圧による構造の急激な変化が、液体CuI、液体CuBr,液体CuClにおいて連続的な変化が見出された。液体銅ハライドの局所構造は、いずれも常圧では四面体構造が主であり、加圧により八面体へ変化する。転移圧力はCuCl,CuBr,CuIの順に高くなっており、この順序は結晶と同じである。結合のイオン性が大きな液体銅ハライドの局所構造の圧力変化は結晶と類似しており、イオン性の大きなII-VI化合物のCdTeの結果と同じである。また、結晶での構造が共有結合のネットワークが2次元的で、原子間の結合に強い結合と弱い結合が共存していると考えられる液体IV-VI化合物の構造の圧力変化を調べた。液体GeSe、液体GeTe、液体SnTe、液体PbTeについて測定を行い、異方的な構造変化を観測した。また、液体GeTeの局所構造は1.8GPaと4.0GPaの間で、液体PbTeは2.6GPaと4.0GPaの問で、液体SnTeは1.6GPaと3.3GPaの間で、急激な構造の変化が起こり、収縮の仕方が変化することを見出した。また、高温高圧力下での電気的測定を行うために、対向アンビル装置で高圧力高温発生の技術開発を行い、高圧力下で液体GaSbと液体CdTeの融解温度までの測定に成功したが、圧力変化の詳細な測定には至らなかった。 これらの結果から、結合のイオン性の大きなI-VII化合物の液体の構造の圧力変化は、結合のイオン性の小さい液体III-V化合物の構造変化が、結晶の圧力誘起相転移と大きく異なるのと対照的であることと、局所構造の異方性の大きいIV-VI化合物の液体では、結晶とは異なる圧力誘起構造変化が起こることが結論された。
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