Research Abstract |
本研究では三宅島2000年噴火の噴出物の粒度や構成物の物理化学的な時間変化から,マグマ水蒸気〜水蒸気爆発が起きた際の,マグマと空洞の関係を推定し,山頂陥没過程に置いてどのような機構で爆発が引き起こされたのかを地質岩石学的に解明することを目的としている.本年度は,三宅島2000年噴火の噴出物について分布と構成鉱物について再解析を行った.噴出物や画像から噴出率を算出することができる.三宅島2000年噴火で最も規模の大きかった8月18日噴火では,噴煙高度が約16kmに達したことが観測された.この噴火の噴出量が溶岩換算で4.2x10^6m^3と見積もられ,その噴出率は高々10^6kg/sのオーダーとなる,プリニー式噴火で想定される理論的モデル(Sparks,1986)では,噴煙高度は1桁ほど小さい(Nakada et al.,2005). また,このまた,類似のマグマ水蒸気爆発を起こした北マリアナ諸島アナタハンの2003年5月中旬の噴火の噴出物の解析を行った.ここでは5月中旬に準プリニー式の噴火が起こり,噴煙は約13kmの高度まで達した.噴出物は安山岩質の軽石〜スコリアで,火口が海水準付近にあり,噴火後,火口底の深度が深くなった.準プリニー式の噴火の後は三宅島と同様のマグマ水蒸気爆発に移行した.前者の総噴出量は溶岩換算で1.4x10^7m^3である.5月中旬の噴出率は2xl0^5kg/sであり,ここでも噴出率が1桁程度少なめに見積もられる(Nakada et al., in press). これら2つの最近噴火例で判明した,噴出率と噴煙高度から推定される噴出率が一致しない理由は,噴火に水蒸気が関与していることが大きな原因であると考えられ,マグマ水蒸気爆発の爆発度を生み出す原因であると考えられる.今後,マグマ物質自身がどれだけ噴火に関与しているかを見積もり,水蒸気の関与についてより定量的な見積もりをする必要がある. 研究費では,備品として,噴出物中の水分を測定するためにカールフィッシャー水分計を購入し,三宅島の噴出物についての水分量を測定中である.
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