2004 Fiscal Year Annual Research Report
有機物の衝撃反応に関する基礎的研究とその宇宙化学的応用
Project/Area Number |
16340172
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三村 耕一 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 助手 (80262848)
|
Keywords | 衝撃波 / 有機物 / 芳香族炭化水素 / 衝撃反応 |
Research Abstract |
出発物質(今回は芳香族炭化水素:PAHsを使用した)を封入した反応容器の上蓋に,ポリカーボネートに貼り付けたステンレス製弾丸を垂直火薬式銃により加速・衝突させることで,衝撃波をPAHsに伝えた.周囲からの汚染に十分注意しながら試料を反応容器から回収し,それらを2分割した,その1方を元素分析計に導入し,試料中の炭素,水素存在度を調べた.もう1方の試料を溶媒に溶解させ,フィルターを用いて可溶成分と不溶成分とに分けた.試料を溶かした溶媒に対し一定量の内部標準試薬を加え,濃縮後,FID検出器付きガスクロマトグラフ,ガスクロマトグラフ・質量分析計で可溶成分の定性・定量を行った. 実験結果により,(1)PAHsは衝撃によって脱水素反応を起こすこと,(2)PAHsは25GPa以上の衝撃圧力で急激に反応すること,(3)PAHsは30GPa以上の衝撃圧力でほとんどが無定形炭素になってしまうこと,などが明らかになった.これら反応の特徴と反応生成物の化学組成から衝撃反応機構の解明を試みた.その結果,反応は衝撃波が試料中を通過している間の高温・高圧環境と衝撃波が通過した後の高温・常圧環境,2つの反応環境で起こっていることが示唆された. 実験結果を地球の集積・形成過程に応用したところ,初期地球のような厚い大気と広い海が存在した環境においては,地球に衝突した隕石中のかなりの有機物が分解されずに地球へ供給された可能性が高いことが判った.この結果と地球形成初期の大規模な隕石衝突現象を考え合わせると,地球の生命起源物質の相当量が,隕石によって地球にもたらされたと結論づけることができる.
|
Research Products
(2 results)