2006 Fiscal Year Annual Research Report
アト秒時間分解光電子スペクトル計算プログラムの開発と光誘起電子移動反応への応用
Project/Area Number |
16350001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
河野 裕彦 東北大学, 大学院理学研究科, 教授 (70178226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤村 勇一 東北大学, 大学院理学研究科, 教授 (90004473)
大槻 幸義 東北大学, 大学院理学研究科, 講師 (40203848)
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Keywords | 原子・分子物理 / 光電子スペクトル / S-行列理論 / 電子波束 / イオン化 |
Research Abstract |
強レーザー場中の分子の超高速電子ダイナミクスの特徴について時間依存断熱状態法や多配置時間依存ハートレー・フォック法を用いて理論的に明らかにしてきた。6員環を持つキラル分子野の合,可視・紫外光による近似的な軌道角運動量の固有電子状態への励起を利用すると,6員環に沿ってどちらか一方向にπ電子を回すことが直線偏光を使っても可能であることを理論的に見いだした(Angew.Chem.Int.Ed.(2006))。ポンプ光とダンプ光の偏光の組み合わせによって一方向に連続的に回転させることができ,光駆動の電子ダイナミクスは複雑なキラリティーなどの分子の個性を巧妙に反映することを明らかにした。最適制御理論に基づいて非経験的に回転運動を制御するパルスも設計し,ポンプ・ダンプ光の時間差と偏光方向が主要な制御因子であることを明らかにした。 S行列と束縛電子波束動力学法を結びつけた光電子スペクトル計算法も改良し,高い励起状態からのイオン化を簡単なトンネルイオン化確率の評価式を用いることにより評価すると,水素分子イオンの場合,厳密計算のイオン化確率を高い精度で再現することを明らかにした。本手法をエタノールなどの多原子分子にも適用し,核間距離が平衡値より2倍程度伸びたところで増強イオン化が起こることを明らかにした。 また,高次高調波からなるアト秒パルス列と分子との相互作用について調べた。水素分子のイオン化によって得られた水素分子イオンでは核間距離がフェムト秒のオーダーで伸び,アト秒パルス列と相互作用して,イオン化によるクーロン爆発と水素分子イオン上での解離が競合して起こる。アト秒パルス列を構成する様々な次数の高調波の強度比を変えることによって,2つの過程の相対比を容易に制御できることも示した。
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Research Products
(9 results)