2004 Fiscal Year Annual Research Report
化学反応および相転移ダイナミクスの多次元振動分光法による理論解析
Project/Area Number |
16350008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
斉藤 真司 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70262847)
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Keywords | 多次元振動分光法 / 水 / 化学反応 / 相転移ダイナミクス / 分子動力学シミュレーション / 非平衡ダイナミクス / 2次元ラマン分法 / 2次元赤外分光法 |
Research Abstract |
我々は、化学反応や相転移ダイナミクスなどの非平衡ダイナミクスおよび過冷却液体の遅い運動を2次元ラマンおよび赤外分光をはじめとする多次元振動分光法による解析を進めている。氷の融解過程の解析を1つの目標に、まず、本年度は水および氷状態(結晶およびアモルファス状態)について、非平衡分子動力学法を用いた2次元ラマン分光法の計算を行った。その結果、水の中では、電場印加後約20フェムト秒で衡振(ライブレーション)運動が励起され、その後約30フェムト秒で並進運動が励起される様子が明らかとなった。また、衡振運動に比べ、並進運動は非調和運動的性質が強く、並進運動が励起されることにより水素結合ネットワーク構造が"揺らされ"スペクトル拡散などが50フェムト秒程度以降に明確になると考えられる。このことは、衡振運動はいわゆる不均一的(遅い揺らぎ)機構、並進運動は均一的(速い揺らぎ)機構であることを示している。また、結晶状態とアモルファス状態の氷の1次元および2次元ラマン分光法の計算を行った結果、通常の1次元ラマン分光法(たとえば、光カー効果)においては、結晶とアモルファス状態の差は小さいが、2次元分光法においては両者の間に非常に大きな違いが見られることが明らかとなった。また、この違いが並進運動の寄与が変化していることによることも明らかにした。以上の結果から、実際に、氷(結晶)状態から水(液体)への変化を引き起こさせた場合に、十分に観測できることが予測され、来年度解析を進めていく予定である。さらに、過冷却液体の解析としては、長時間の分子動力学計算を行い、周波数依存の比熱の温度依存性の解析を行った。この解析をもとに、エネルギーランドスケープの情報の抽出の可能性を検討している。さらに、来年度に向けて2次元周波数依存比熱および2次元中性子散乱の解析を開始した。
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Research Products
(4 results)