2005 Fiscal Year Annual Research Report
化学反応および相転移ダイナミクスの多次元振動分光法による理論解析
Project/Area Number |
16350008
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
斉藤 真司 分子科学研究所, 計算分子科学研究系, 教授 (70262847)
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Keywords | 2次元ラマン分光法 / 分子動力学シミュレーション / 非平衡分子動力学法 / 非調和ダイナミクス / アモルファス氷 / 2次元スペクトル / 2次元赤外分光法 / 不均一性 |
Research Abstract |
まず、液体状態および固体状態の水の2次元ラマン分光法の解析を進めた。水、氷およびアモルファス氷に対する平衡分子動力学計算を行い、そこで得られた軌跡に露わに電場印加を考慮する非平衡分子動力学計算を行うことにより2次元ラマンシグナルの計算を行った。その結果、並進運動に関しては分極率の非線形性とともに運動の非調和性が大きく、これらの影響により振動的な電場応答を示すのに対し、衡振運動においては主に分極率の非線形性により負の電場応答を示すことが明らかになった。さらに、2次元スペクトルを求め、和周波、差周波ピークとして明確に現れる並進運動と回転運動および並進運動間のカップリングの様相を明らかした。水は、低温状態において10種類以上の結晶を持ち、さらに2種類以上のアモルファス状態(LDA, HDA, VHDA)も発見されており、固体状態の水の構造・ダイナミクスの解析に興味が持たれる。氷Ih、LDA、HDA、VHDAなどの2次元ラマン分光法の解析を行った。その結果、氷の構造非等方性、また、密度の違いに由来するLDA、HDA、VHDAのネットワークの局所構造の違いに対しても、1次元分光法に比べ2次元ラマン分光法は非常に敏感であることが明らかになった。このように、2次元ラマン分光法が、系のダイナミクスや局所構造に非常に敏感であることを示し、その有用性を明らかにすることができた。 さらに、2次元赤外分光法の解析を開始した。100fs程度でシグナルが弱まり、不均一性の喪失が起こっている様子が明らかになってきた。現在、さらに統計平均を増やし精度を向上させている。
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Research Products
(5 results)