2005 Fiscal Year Annual Research Report
非経験的フラグメント分子軌道法による蛋白質の構造最適化計算のルーチン化
Project/Area Number |
16350017
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
北浦 和夫 独立行政法人産業技術総合研究所, 計算科学研究部門, 総括研究員 (30132723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上林 正巳 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物機能工学研究部門, 主任研究員 (70356559)
根本 直 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物情報解析センター, 主任研究員 (70357739)
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Keywords | FMO法 / 蛋白質の電子状態計算 / フラグメント分子軌道法 / 蛋白質の構造計算 / 非経験的分子軌道法 |
Research Abstract |
代表者らは、10年程前から巨大分子の電子状態計算のためにフラグメント分子軌道法(FMO法)を開発してきた。FMO法は現時点で、数万原子系のエネルギー計算が可能であるが、分子の構造・機能・反応の定量的議論には構造最適化を行うことが不可欠である。これは、1点計算に比べると数百から数千倍もの計算時間がかかるため、高速化のための改良が必要である。また、蛋白質のような巨大分子では分子内に多数の非結合相互があり、これらを精度よく記述するためには、電子相関理論が必要である。本研究は、数千原子系の分子系の構造最適化計算を日常化するために必要な方法論の改良とノウハウを蓄積することを目的としている。 昨年度は、数百原子程度のポリペプチドと小蛋白質の構造最適化計算を行った。この成果を基に、本年度はより現実系に近い、蛋白質-リガンド複合体についての構造最適化計算を試みた。ひとつは、カイコ蛾のホルモン結合蛋白質とホルモンの複合体(2155原子系)で、リガンドと蛋白質のポケットを構成する22アミノ酸残基、あわせて約450原子からなるモデル系について構造最適化を行い、この構造を用いて全系の1点計算により蛋白質とリガンドの結合エネルギーを求めた。最適化構造は実験構造と差(RMSD)が0.35*と、良い一致が得られた。このアプローチは、ドラッグデザインなどに応用可能である。もうひとつは、より巨大なコリスメートミュターゼ(5687原子系)の酵素反応機構の解析で、量子・古典融合(QM/MM)法により、基質(QM)と全蛋白質(MM)により、反応系、遷移状態、生成系の構造を求め、これらの構造で全系のFMO計算を行い、触媒作用に重要なアミノ酸残基の働きを解析した。これらの研究を遂行する中で、FMO法プログラムに動的負荷分散の仕組みなどより高速化するための改良を加えた。 方法論の開発に関しては、より精度の高い電子相関理論であるcoupled cluster法(FMO-CC法)を開発した。また、溶媒効果の連続誘電体モデルのひとつであるPCM法を組み込んだFMO/PCM法を開発した。これらの成果は、世界的に普及しているab initio MO法のプログラムであるGamessに組み込んで公開した。
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Research Products
(4 results)