2006 Fiscal Year Annual Research Report
非経験的フラグメント分子軌道法による蛋白質の構造最適化計算のルーチン化
Project/Area Number |
16350017
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST) |
Principal Investigator |
北浦 和夫 独立行政法人産業技術総合研究所, 計算科学研究部門, 上席研究員 (30132723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上林 正巳 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物機能工学研究部門, 主任研究員 (70356559)
根本 直 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物情報解析センター, 主任研究員 (70357739)
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Keywords | FMO法 / 蛋白質の電子状態計算 / フラグメント分子軌道法 / 蛋白質の構造計算 / 非経験的分子軌道法 |
Research Abstract |
フラグメント分子軌道(FMO)法を用いた、蛋白質の構造最適化計算を実用化するための方法論の開発・改良を行った。 (1)アラニン10量体モデルペプチド(α-helix、β-turn、extended配座異性体)と合成小蛋白質(PDBコード:luaoと1l2y)について、FMO法と標準ab initioMO法による最適化構造の比較を行いFMO法の精度を検証した。計算は両者ともにRHF/3-21Gレベルを用い、FMO法は、一部を除いて、2残基単位でフラグメント分割した。両者の平均二乗変位(RMSD)は、結合距離が0.005Å、結合角は0.6°、ペプチド二面角(φ、Ψ、ω)は8°以下となり、FMO構造がab initio構造を精度よく再現することを証明した。 (2)蛋白質を気相で構造最適化計算を行うと、分子内の水素結合や塩結合が過剰に形成された。水溶液中の構造のモデルとして、蛋白質の周りに三層の水分子殻を配置したモデルでluaoと1l2yの構造計算を行い、実験構造との比較を行った。計算は、溶質分子をFMO-RHF/3-21G、溶媒分子はTIP3PポテンシャルとしたIMOMM型の量子/古典融合法で行った。その結果、蛋白質表面の過剰な分子内水素結合が解消され、NMRの実験構造と良く一致する構造が得られた。水溶液中でのより現実に近い構造を求めるには、分子動力学シミュレーションを行い平均構造を求める必要があることは言うまでもない。これを行うにはFMO法をより高速化する必要があり、今後の課題である。 (3)FK506結合蛋白質と4種のリガンドとの複合体について、リガンドとその周辺のアミノ酸残基を切り出したモデル系(約500原子系)について、FMO-RHF/3-21Gでリガンドの構造最適化計算を行った。X線構造とのRMSDは約0.5Åとなり、非常によい一致が得られた。この結果は、蛋白質とリガンドの高精度な結合エネルギー計算に向けた第一歩となる。 (4)その他、FMO法による蛋白質の電子状態計算の精度をより向上させるための改良を行った。また、FMO法による分子内・分子間相互作用の解析法(ペア相互作用エネルギー分割法)を提案した。これは巨大・複雑な分子の構造と安定性や分子間相互作用を理解するための有用なツールになることが期待される。
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Research Products
(6 results)