2005 Fiscal Year Annual Research Report
有機リン類合成のクリーン化、高度化及び化合物の機能化
Project/Area Number |
16350027
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
韓 立彪 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境化学技術研究部門, 主任研究員 (30356860)
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Keywords | 有機リン化合物 / 触媒反応 / 光学活性リン類 / 不斉合成 / 不斉付加 / 立体特異的 / P-キラリティー / ラジカル付加 |
Research Abstract |
17年度では、光学活性なリン化合物の新規高効率合成の検討を行った。現在では、光学活性有機リン化合物の合成には一般的に繁雑な操作を要す。その結果、光学活性リン化合物には、高価なものが多くて、また構造的にバラエティーに乏しい。我々の触媒的ヒドロホスホリル化反応を使えば、多くの光学リン類を容易に合成可能であると考えた。まず、H-P(0)結合のアルケン類への触媒的不斉付加反応を検討した。この反応により、多くのC-キラリティーを有する有機リン類を効率よく提供することが可能と期待される。5員環ジオキサホスホラン2-オキシドとノルボルネンとの反応を酢酸パラジウム/光学活性ホスフィン触媒系を用いて行ったところ、BINAPなどでは低eeしか得られなかったが、光学活性フェロセン系ホスフィン配位子、特にJosiphos系ホスフィン配位子を用いた時に、高いee選択性でヒドロホスホリル化が進行した。反応条件の最適化を行い、溶媒としてジオキサンを用いた時に、81.5%ee選択性で付加物を与えた。ノルボルネンの代わりに、スチレンへの不斉ヒドロホスホリル化を同様に行ったおころ、最高不斉選択性72.5%eeで進行した。このようなC-キラリティーリン類の合成を行うと同時に、P-キラリティーを有するリン類の合成についても検討した。すなわち、まず光学的に純粋な(Rp)-メンチルフェニルホスフィナートを容易に大スケールで合成する手法を開発した。これのアルケン類へのラジカル的付加を検討したところ、付加は立体特異的に(リン上の立体が保持)進行し、対応する光学活性ホスフィナート類を高い収率で与えた。すなわち、等モル量の1-オクテンのベンゼン溶液にAIBNを加え、80℃で混合物を加熱した。付加の効率は基質の濃度に大きく影響される。濃度が低い場合は、付加物収率が低く、反応は完結しない。これに対し、高濃度下では、付加反応は効率よく進行する。いずれの場合も立体特異的に進行し、付加物(RP)を選択的に与えた。興味深いことに、同条件下では(Rp)-メンチルフェニルホスフィナートのラセミ化は殆ど生起しない。官能基を有する末端アルケン類を用いた場合も、同様に反応が立体特異的に進行した。また、弱い塩基触媒を用いることにより、上記P-H化合物の電子吸引基を有するアルケン類への付加も立体保持で進行した。この反応を用いて、二配座光学活性リン類誘導体を容易に合成できた。
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