2006 Fiscal Year Annual Research Report
電子移動ストップトフロー分光法という方法論に関する展開研究
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16350042
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小山 宗孝 京都大学, 国際融合創造センター, 助教授 (90221861)
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Keywords | ストップトフロー法 / 電子移動反応 / 有機カチオンラジカル / 芳香族アミン化合物 / 二量化反応 / 反応機構解析 / 中性分子効果 |
Research Abstract |
本年度は、まず、メタ位に置換基を導入したジフェニルアミン誘導体カチオンラジカルのアセトニトリル中での減衰反応について電子移動ストップトフロー法を用いて解析した。 クロロ、メチル、および、メトキシ基を導入したジフェニルアミンカチオンラジカルについて吸収スペクトルの変化を系統的に観測した結果、メタクロロジフェニルアミンカチオンラジカルの減衰反応は、無置換のフェニル基のバラ位が結合した二量体であるベンジジンの生成によるものであることがわかった。また、このときの減衰反応の速良則はカチオンラジカルに対して2次で進行することから、反応機構としてはカチオンラジカルーカチオンラジカルのカップリング反応であることが推測できる。さらに、この反応系では、中性分子を添加した場合には減衰反応が加速される様子も見られた。 これに対して、メチル置換体やメトキシ置換体のカチオンラジカルでは、吸収スペクトル測定の結果、減衰反応はベンジジン生成を経由しないことが明らかになった。このことは、電子供与性の置換基がメタ位に導入されることによってカチオンラジカルの環化二量化か高速で進行することを示唆している。 このように、電子移動ストップトフロー法による時間分解吸収スペクトル測定は反応経路を識別する目的でも有効であることがわかった。 このほかにも、有機カチオンラジカルやダイカチオンの吸収スペクトル測定に電子移動ストップトフロー法は有効であり、アミン骨格を有し高スピン状態となるアリルトリアミン誘導体などの物性測定に関しても興味深いデータが得られた。
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