Research Abstract |
液液二相系において,タンパク質やDNAといった生体高分子を有機相に抽出できる逆ミセルが注目されており,その生成過程や取込み過程を明らかにすることが,本年度の目的である。薄層二相マイクロセルを作成し,アルカン/水界面で自発的に生成および消滅を起こすAOT(sodium bis(2-ethylhexyl)sulfosuccinate)の巨大逆ミセルを,in situで顕微鏡(透過光)によって測定し,以下のような逆ミセルの特性を明らかにした。 1×10^<-3>Mまたは1×10^<-2>MのAOTを含んだドデカンと水を接触させると,ドデカン/水界面は接触直後から対流し,数分後には,界面近傍のドデカン相中に,自発的に生成した多くの逆ミセルが見られるようになった。これらの逆ミセルは,すべて三次元的なブラウン運動をしていた。また,水相には何もみられなかった。ブラウン運動の解析から,これら逆ミセルの半径は,100〜1200nmの範囲であることがわかった。この値は,一般的な逆ミセルと比べて,10〜100倍も大きい。また,この巨大逆ミセルのサイズは,界面作成直後は小さいが,時間とともに大きくなる傾向があった。いくつかの巨大逆ミセルは,界面近傍において突然消滅した。このような消滅は,界面の極近傍でのみ観測されたことから,界面との融合が巨大逆ミセルの唯一の消滅過程であると言える。 このように,巨大逆ミセルは,界面において生成と消滅を繰り返し,消滅しなかった巨大逆ミセルはドデカン相に拡散することが明らかになった。二相接触から数時間経過すると,巨大逆ミセルの総数は減少し,界面の対流もほとんどなくなり,平衡へ向かって系が収束した。
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