Research Abstract |
研究代表者らは既に,トルエン/硫酸水溶液界面で,5,10,15,20-テトラフェニルポルフィン(tpp)の中心の2つのN原子がプロトン化してH_2tpp^<2+>となり,それが集積化することを巨視的な測定から明らかにしている。 本研究では,研究代表者が世界に先駆けて開発した薄層二相マイクロセルを用いて,まずトルエン/硫酸水溶液界面,および,ドデカン/硫酸水溶液界面で,H_2tpp^<2+>の分子集積体のドメインが生成することをin situ顕微法により見出した。そのドメインの大きさや形状にはtppや硫酸の濃度依存性があったが,特に,硫酸の濃度6.0mol dm^<-3>のドデカン/硫酸水溶液界面において,大きさ5-100μmの微小なひし形状のドメインが観察された。 次いで,顕微鏡の対象物上において,直径4μmの範囲の光の強度を分光して計測するシステムを作成した。そのin situ顕微分光計測装置を用いて,ドデカン/硫酸水溶液界面に生成したH_2tpp^<2+>集積体のドメイン1つの吸収スペクトルを測定し,473nm付近に吸収極大を示すことを明らかにした。この波長は,先の巨視的な測定結果と一致していた。また,その吸光度から,ドメインにおけるH_2tpp^<2+>分子のみかけの厚みを算出した。 また,入射光を直線偏光として,その偏光方向を変えて顕微画像を取得した。その結果,一つのドメインは均一であることが判った。さらに,偏光方向とドメインの長軸のなす角度の関数として,吸光度を測定した結果,H_2tPP^<2+>集積体のドメインは,その長軸方向に一種類の遷移双極子モーメントを有することが明らかになった。
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