2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16350076
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
久枝 良雄 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (70150498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶌越 恒 九州大学, 大学院・工学研究院, 助手 (00284539)
林 高史 大阪大学, 工学研究科, 教授 (20222226)
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Keywords | コバルト錯体 / 二核錯体 / 酸化還元挙動 / デンドリマー / 光応答性 / DNA切断活性 / コバルト-炭素結合 / ラジカル |
Research Abstract |
1)シッフ塩基型の二核化配位子を合成し、これにコバルト(II)を導入し二核錯体を創製した。二核コバルト錯体の軸配位子としてゼロ世代から4世代のデンドロンアミンを配位させることにより、デンドリマー錯体が生成した。本錯体は、コバルトの価数を+2価と+3価で可逆的に変化させることで、軸配位特性によりデンドリマー構造を可逆的にオン/オフすることが出来た。また、サイクリックボルタンメトリーによる酸化還元挙動の検討より、第4世代デンドリマーでは、酸化還元ピークのブロード化が観測され、デンドリマー効果が表れたものと推察される。 2)アルキルコバルト錯体はラジカル源であるコバルト-炭素結合を有し、低エネルギーの可視光でラジカル種を生成する。本研究では、ラジカル源であるコバルト-炭素結合を2個有する水溶性二核アルキルコバルト錯体を新規合成し、DNA二本鎖切断活性を対応する単核アルキルコバルト錯体と比較・評価した。DNA切断実験は錯体とDNAを溶解した緩衝溶液(pH8.4)に可視光照射(タングステンランプ、10分間)して光反応を行い、アガロースゲル電気泳動によりDNA切断活性を検討した。 二核錯体を用いるとDNA二本鎖切断の生成物であるForm IIIが増加し、二核錯体にすることで二本鎖切断活性が向上することが明らかになった。次に、DNA切断活性種の検討に関して、ESRスピントラップ実験では二核錯体への可視光照射により生成するアルキルラジカル及びアルキルラジカルと酸素が反応して生成するアルコキシラジカルが検出された。ラジカル阻害剤を加えたDNA切断実験ではアルキルラジカルの阻害剤だけで切断が阻害され、可視光照射により生成するアルキルラジカル及びアルコキシラジカルがDNA切断の活性種であることを明らかにした。また、二核錯体とDNAの結合様式・結合定数を検討するため、DNAにインターカレートしたエチジウムブロマイド(EtBr)の追い出し実験を行った。二核錯体によるDNAに結合したEtBrの追い出し及び10^7オーダーの大きな結合定数から、二重らせんを形成しているDNAの溝に結合しながら二核錯体の一部がDNAにインターカレートしていると推察される。 3)上記のように、数種類の新規二核コバルト錯体を合成し、酸化還元応答するデンドリマー錯体の創製、および二核コバルト錯体をラジカル生成剤として用いたDNA切断試薬の創製に成功し、新しい二核錯体の動的特性を見出した。
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Research Products
(6 results)