2006 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質立体構造におけるイオウ原子の動的および静的電子効果の解明
Project/Area Number |
16350092
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岩岡 道夫 東海大学, 理学部, 助教授 (30221097)
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Keywords | タンパク質立体構造 / イオウ / 非結合性相互作用 / 電子効果 / タンパク質構造データベース / セレン試剤 / タンパク質フォールディング / 分子シミュレーション |
Research Abstract |
本研究は,タンパク質中に存在するイオウ原子の構造生物学的な新機能を明らかとするために,タンパク質の立体構造が形成する原理(動的側面)と安定化の仕組み(静的側面)を有機化学的な視点から解明することを目的としている。平成18年度は,主として以下に挙げる4つの具体的な課題で研究成果を得た。 1.SS結合を4つもつリボヌクレアーゼ(RNase A)の酸化的フォールディング過程の解明.独自に開発した水溶性セレン化合物をタンパク質フォールディング試剤として用いることにより,SS結合の形成過程とSS結合の組み換え過程を分離して観測することに成功し,SS結合組み換えに伴うネイティブ構造の形成を観測することに成功した。SS結合の組み合わせが正しくなることがネイティブ構造の形成には必要であることが確かめられた。 2.タンパク質中のSS結合をSeSe結合へと変換する手法の開発.システィンをセレノシスティンに化学変換する新規手法を開発した。この反応を応用して,セレノシスティンを含むペプチドおよびタンパク質の新しい合成戦略を立て,具体的な検討を進めている。 3.タンパク質構造データベース(PDB)を用いたS…OおよびS…N相互作用の解析.ボスホリパーゼA2以外のタンパク質についても相互作用の進化的保存性や酵素活性との関連について解析を進めた結果,リゾチームやリボヌクレアーゼA,インスリンなどで同様なS…OおよびS…N相互作用の存在が示唆されている。 4.タンパク質立体構造の分子シミュレーション.独自に開発したSAAP力場を用いて強い鎮痛作用をもつ含イオウペプチドであるMetエンケファリンの水中における分子シミュレーションを行った。イオウ原子が芳香環の近傍にくる構造が比較的安定であることが明らかになった。 これらの研究成果の一部は,平成18年度中に3報の学術論文として公表した。
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Research Products
(4 results)