2004 Fiscal Year Annual Research Report
磁気光学ファラデー効果を用いた磁束量子のダイナミクスおよび制御に関する研究
Project/Area Number |
16360033
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村上 博成 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 助教授 (30219901)
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Keywords | ファラデー効果 / 磁気光学顕微鏡 / 高温超伝導体 / 磁束量子 / アブリコソフ格子 / 希土類鉄ガーネット / レーザー / 高温超伝導デバイス |
Research Abstract |
本年度の主な研究実績について以下に示す 1.独自の高感度・高分解能磁気光学顕微鏡システムを構築し、高温超伝導体単結晶試料BSCCOにおける磁束分布観察を行った。これまでTSFZ法により育成した薄片試料においては、侵入した磁束が結晶a軸方向に配列するという結果を得ていたが、この性質がBSCCO試料固有のものであるかを確認するため、LPE法により育成したBSCCO単結晶薄片試料を用いて観察を行った。その結果、LPE試料においては磁束のこのようなa軸配列構造は一切観察されなかった。このことから、TSFZ試料においてはその育成方法に由来する固有の磁束ピンニングサイトが結晶a軸に沿って存在する可能性が示唆された。これについては、TSFZ試料では、育成時の結晶育成方向(a軸方向)に沿って原子欠陥が導入されるという報告があり、コヒーレンス長の極端に短い高温超伝導体ではこれら原子欠陥がピンニングサイトとしてある程度有効に働いているものと考えられる。 2.この高感度・高分解能磁気光学顕微鏡システムを用いた上記LPE法により成長した単結晶薄片試料中の磁束観察において、アブリコソフ格子状の三角格子配列が観察された。この際印加した外部磁場条件で計算上得られるアブリコソフ格子間隔と観測された格子間隔がほぼ一致することから、この観測された格子配列像は単一磁束量子の配列を観察したものと考えられる。このように高温超伝導体試料中の単一磁束量子の観察を磁気光学法を用いて行った例はこれまでに報告されておらず、世界で始めての成功例である。(本成果については現在論文執筆中) 3.磁気光学顕微鏡観察における感度および分解能は、検出に用いる光に対する透過特性や偏光特性と密接に関係するファラデー素子の厚さに強く依存する。今後計画しているさまざまな研究に対応するためには、目的に合わせて膜厚を制御したファラデー素子の入手が必要不可欠であり、この素子作製を行った。用いた作製法は有機金属分解(MOD)法であり、Bi, Ga置換型の希土類鉄ガーネット膜の作製を行った。この方法ではMOD溶液の塗布回数により容易に膜厚の制御を行うことが可能である。現在までにガラス基板上での多結晶膜の作製およびGGG基板への単結晶膜の作製に成功しており、多結晶膜では、これまで使っているLPE成長した単結晶ガーネット膜と比べて、磁気光学特性および透過特性ともに優れた素子の作製に成功している。今後は、このように作製したガーネット膜を使って高温超伝導体デバイス中の磁束量子状態の観察を行う予定である。
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Research Products
(6 results)