2005 Fiscal Year Annual Research Report
磁気光学ファラデー効果を用いた磁束量子のダイナミクスおよび制御に関する研究
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16360033
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村上 博成 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 助教授 (30219901)
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Keywords | ファラデー効果 / 磁気光学顕微鏡 / 高温超伝導体 / 磁束量子 / アブリコソフ格子 / 希土類鉄ガーネット / レーザー / 高温超伝導デバイス |
Research Abstract |
本年度の主な研究実績について以下に示す 1.これまでの従来型の磁気光学顕微鏡システムでは、磁束量子の準静的な観測は行えるものの、そのダイナミック状態について実時間計測することは不可能である。この点を改善するため、これまでの経験を生かし高感度・高分解能を有する走査型レーザー磁気光学顕微鏡の開発に着手した。この開発に先駆け、今年度はプロトタイプのシステムの構築を行った。このプロトタイプシステムの評価を行うため、高温超伝導体YBCO薄膜をストリップ状に加工した電流ラインをフォトリソ加工により作成し、電流を印加した状態で発生する磁界の分布について測定を行った。その結果、この簡易システムにおいても数10mA程度の電流により発生する磁界の観測が出来ることを確認した。今回使用した光検出器は汎用のフォトダイオードであり、実際に構築する正規システムで、これを光電子増倍管に切り替えることにより更なる高感度化が十分期待できる。 2.磁気光学効果を利用した磁束量子状態の観察では、インジケータとして用いるファラデー光学素子の性能が重要である。このため昨年度より有機金属分解法によるビスマス(ガリウム)置換型希土類鉄ガーネット膜の作成に取り組んでいる。今回、構築する走査型レーザー磁気光学顕微鏡のレーザー強度、波長などの仕様を特定するため、作成したガーネット膜の磁気光学特性について詳細に調べた。その結果、波長635nmのレーザーを用いた計測では、膜厚に関係なく磁気光学特性を決定するヴェルデ定数は(2.05±0.2)×1^<-5>[rad/μm・Oe]であることがわかった。またこの結果は、膜厚2μmのガーネットを作成した場合、約4×10^<-5>[rad/Oe]程度のファラデー回転能を有することを意味しており、例えば磁束量子(φ_0=2.07×10^<-7>gauss・cm^2)が直径1μmの領域に閉じ込められているとすれば(これは28 Oeの磁界に相当する)、ファラデー回転角として約5.6×10^<-4>radを生じさせることが出来る。よってこの時、この領域に照射するレーザー強度を10mWにすれば、透過率を50%程度としても、磁束量子に相当する信号として数nW程度の強度の光を検出できることになる。この程度の信号強度があれば、その検出器に光電子増倍管を使用した場合、数mA程度の信号電流を観測することになり、十分良好なSN比のもとサブナノ秒時間オーダーの超高速観察が可能となることがわかった。 3.また磁気光学システムを使って測定評価の対象となる具体的な超伝導デバイスに関する研究として、超伝導磁束フロー型トランジスタの基本的電気特性について評価・検討を行った。 以上の研究成果については、一部出版済み、一部現在投稿準備中である。
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Research Products
(2 results)