Research Abstract |
本研究では,マクロから結晶粒界の状態に至るまでのマルチスケールの力学的観点から,Bi2223/銀酸化物高温超伝導複合線材について,優れた超伝導特性を実現する要件を提案することを目的とする.微視的構成要素について熱履歴,外的な荷重に対するひずみを解析し,Bi2223フィラメント破壊の微視空間分布観察と併せ,メゾ的な因子が超伝導特性に及ぼす影響を体系化し,最適化を行う.本年度の成果は次のように要約される. 1)近年新たに開発された加圧焼成法により作製された数種のテープ材を対象として,前年度に開発した高精度の微視構造要素力学特性評価法を用いて微視構造と力学特性の相関について検討した. 2)製造時から出荷時の検査等すべての履歴を配慮した熱サイクルの影響を組入れ,かつ,低温での引張り試験と超伝導特性の同時測定の結果から,複合線材の破断前にフィラメントが破断する事実を組入れ,複合線材の各要素の熱残留応力の検討を行った.また,銀合金に関しては,ヴィッカース硬度から応力ひずみ関係を推定した.構成要素の応力ひずみ関係の積上げによる推定した複合線材の応力ひずみ関係は,実験値によく一致した.すなわち,開発した方法で複合線材中のフィラメントの破断ひずみが正しく評価できることが証明された. 3)弾性率に関して,加圧焼成を行うことにより向上が認められたが,加圧焼成を行った異なる線材間での差は認められなかった.また,フィラメントの破断ひずみに関しては,線材作製方法による変化は認められなかった. 4)加圧焼成を行わない材料に関しては,テープ中央とエッジでボイド等の含有率が異なり,加工度の影響が認められたが,加圧焼成を行った材料ではその差は認められなかった.そのため,Bi2223複合線材の破断ひずみ向上には根本的に概念の異なる手法が必要であることが明らかになった.
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