2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16360093
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
関 真佐子 関西大学, 工学部, 教授 (80150225)
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Keywords | 物質輸送 / 糖鎖 / 微小血管 / 透過係数 / 反射係数 |
Research Abstract |
血管壁の内皮細胞表面に存在する糖鎖層(glycocalyx)の生理的意義に関して、本年度は血液と血管外組織間の溶質の物質輸送に果たす役割に着目し、溶質の輸送がglycoclayxの存在によってどのような影響を受けるかを理論的に調べた。最近の実験により得られた糖鎖のnmスケールの微視的構造に基づいてglycocalyxをモデル化し、糖鎖層の両側の圧力差および溶質の密度差に起因する輸送量を、熱力学・流体力学に基づく数値解析により求めた。具体的には、拡散と移流による輸送の程度を表す輸送係数(透過係数、反射係数)を、溶質のサイズの関数として表し、実験結果と比較検討した。glycocalyxの微細構造を取り入れ、溶質個々の運動を力学的に解析している点が、従来の平均場近似による解析とは異なる。得られた輸送係数を動物実験の測定結果と比較すると、透過係数、反射係数ともこれまでにない良好な一致が得られた。透過係数に関しては、溶質サイズが0.23nmから3.6nmに増加すると1桁以上減少すること、反射係数に関しては3.5nm程度の直径をもつ溶質の値が動物の種類や臓器にほとんど無関係に0.8という高い値になることを説明する結果となった。以上のことから、内皮細胞表面に存在するglycocalyxは血管壁を通しての溶質透過性に分子フィルターとして働き、溶質サイズによる選択的透過性に重要な役割を果たしていることが強く示唆された。
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