Research Abstract |
ラジカル消費物質としてメタノールを直接噴射することによる予混合圧縮着火燃焼の能動的制御と運転領域拡大を試み,とくに,圧縮比および主燃料のオクタン価の影響を中心に実験による検討を行った.その結果,圧縮比に対し主燃料のオクタン価を適切に選択すれば,メタノール噴射を行なうことにより広い運転範囲において失火とノッキングを回避した安定燃焼が可能であること,本研究の範囲では,比較的低い圧縮比と低いオクタン価燃料の組み合わせが最も高い出力,かつ比較的広いメタノール量範囲で運転が可能となることが明らかとなった.圧縮比の低下は,温度レベルの低下により低温・高温両酸化反応の発現を遅延させるとともに,高温酸化反応の急激化を抑制するが,低温酸化反応の熱発生量には直接的な影響を与えないのに対し,オクタン価の向上は,低温酸化反応を抑制し,その後の温度上昇を緩和するため,高温酸化反応の過早化を回避し得ることが判明した.以上の特性から,低温酸化反応を能動的に抑制できるメタノール噴射を有効に適用するためには,低オクタン価燃料で大きな低温酸化反応を生じさせ,これを運転条件に応じてメタノール噴射で制御するのが最適であり,その際の圧縮比は高温酸化反応の急激化を緩和するために低めに設定することが望ましいという結論が得られた.一方,供試機関で失火を回避して予混合圧縮着火燃焼を行なうには,着火をある時期以前に生ずるようにする必要があること,メタノールは,自身のオクタン価(RON=112)のわりに予混合圧縮着火燃焼の着火抑制効果が非常に大きいこと,およびノッキングおよび失火を回避して予混合圧縮着火燃焼を高負荷まで拡大すると,シリンダ内ガス温度の上昇にともなってNO_xが著しく増加するが,これには20%程度のEGRで十分に対応可能であることが明らかとなった.
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