Research Abstract |
本研究では,アルコール触媒CVD法とディップコート触媒担持法を合わせた垂直配向単層カーボンナノチューブ膜の合成法の改良及び最適化を試みた.アルコールの圧力,流量,及び合成温度等を制御しながら垂直配向単層カーボンナノチューブ膜を合成し,膜厚の時系列を計測した.その結果,各生成温度に対して,膜厚が最大となる最適圧力がそれぞれ異なって存在することが確認された.また,膜厚の時系列から初期活性及び活性失活時間を定量的に評価した.垂直配向単層カーボンナノチューブの初期活性及び活性時間に対する,温度及び圧力の影響を調べた結果,初期成長速度は温度に殆ど関係なく圧力のみに比例することが明らかになった.これは,単層カーボンナノチューブの成長反応が1次反応で表されることを示唆している.さらに,活性失活時間の圧力依存性から,触媒が失活する臨界圧力を特定した. 以上の計測より最適な実験条件が明らかになったことで,安定に10μm超の高品質・高純度の垂直配向膜を合成することが可能となった.さらに,これらの実験で合成した垂直配向層カーボンナノチューブ膜の直径分布を各種分光法を用いて評価することによって,合成条件の直径分布への影響を検証した.その結果,臨界圧力よりも高圧で合成した垂直配向膜から比較的直径の細い単層カーボンナノチューブが観察された. 次に,単層カーボンナノチューブを用いた新しい複合体材料の開発を念頭に,垂直配向単層カーボンナノチューブ膜を樹脂に混合した複合材料を作成し,その伝熱性能を評価した.フォトサーマル赤外検知法を用いて,複合材料の熱伝導率測定を行った結果,複合材料は垂直配向単層カーボンナノチューブ膜の伝熱特性を反映して,強い非等方性を有することが確認された.
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