Research Abstract |
本研究では,高保磁力で耐熱性を有するボンド磁石の作製を目的に,今年度は希土類量の多いDi-Fe-Co-B合金にNb-Vの複合添加を試み,組成,急冷条件,熱処理等がDi-Fe-Co-Nb-V-B系急冷薄帯合金の磁気的性質,物理的性質にどのように影響を及ぼすかを詳細に検討した。また,得られた薄帯を用いて等方性圧縮成形ボンド磁石を作製し,それらの諸特性についても詳細に検討した。 実験に用いた原材料はDi-Fe合金,Fe, Co,Nb, V, Bである。Di-Fe母合金はNdが66.7wt%,Prが19.1wt%, Feが14.1wt%のものを用いた。ここで,組成からジジムの原子量を143.5とした。急冷薄帯作製に用いた組成はDi_<125>Fe_<715>Co_<10>Nb_xV_yB_6であり, xを0〜2.0at%, yを0〜2.0at%と変化させたものである。上記の各組成の母合金は,〓空吸い上げ法により棒状インゴットを作製した。また薄帯作製時の条件は,ロール周速度15.0〜20.0m/sで行った。薄帯の熱処理は,高純度Arガス雰囲気中で,熱処理温度は575〜650℃,熱処理時間は0〜15minの範囲で変化させた。ボンド磁石の作製は,薄帯試料を最適条件で熱処理した後、-150μmの粉末を用いて,圧縮成形ボンド磁石を作製した。 以上の実験結果をまとめると次のようである。 1)Di_<12.5>Fe_<71.5>Co_<10>Nb_xV_yB_6組成急冷薄帯において,良好な磁気特性が得られた試料の組成,作製条件は次のようである。組成:Di_<12.5>Fe_<69.5>Co_<10>Nb_1V_1B_6,ロール周速度:17.5m/s,熱処理条件:600℃×5min このときの磁気特性としては,J_r=0.86T, H_<cJ>=1100.0kA/m, H_<cB>=596.3kA/m, (BH)_<max>=128.3kJ/m^3, H_k/H_<cJ>×100=40.8%,キュリー温度:400℃を得た。また,TEM写真より,本試料の平均粒径は25nmであった。最適作製条件で作製したDi_<12.5>Fe_<71.5>Co_<10>Nb_xV_yB_6組成急冷薄帯試料の温度係数は,J_rの可逆温度係数の平均α(J_r)_<ave>=-0.044%/℃であり, H_<cJ>の温度係数α(H_<cJ>)_<ave>=-0.37%/℃であった。 2)Di_<12.5>Fe_<69.5>Co_<10>Nb_1V_1B_6組成において最適条件で作製した薄帯試料を用いて作製した代表的な等方性圧縮成形ボンド磁石の磁気特性は,J_r=0.71T, H_<cJ>=1072.8kA/m, H_<cB>=494.6kA/m, (BH)_<max>=88.9kJ/m^3, H_k/H_<cJ>×100=36.8%であり,密度は6.30Mg/m^3であった。 3)Di_<12.5>Fe_<69.5>Co_<10>Nb_1V_1B_6組成ボンド磁石の125℃における磁束の不可逆減磁率は-2.06%,また150℃においては-3.64%と,市販のMQP-B^+ボンド磁石と比較して約1/3という良好な耐熱性が得られた。
|