Research Abstract |
本研究は,土木鋼構造部材に生じる低サイクル疲労破壊の防止手法を開発することを目的としている.本年度は,鋼製部材の低サイクル疲労強度を詳細に解明することを目的として,鋼素材,溶接部(溶着金属および熱影響部)のそれぞれの材質からなる疲労試験体を作成し,画像計測を援用することにより新たに開発した低サイクル疲労試験システムにより試験を行った.特に,従来データがほとんど得られていない,数回から数十回で疲労破壊が生じるような極低サイクル領域に着目して試験を行った.その結果,鋼素材の低サイクル疲労に比較して,溶着金属部のそれは大幅に低下すること,熱影響部においてはさらに強度低下が顕著であることを明らかにした. この試験で得られた強度曲線を基に,実際の鋼構造部材に対して繰り返される変動ひずみ下での疲労強度の推定手法について検討を行った.複数の時系列パターンを有するひずみ波形を試験体に導入し,その際の低サイクル疲労強度を実験的に求めた.その結果,従来からよく用いられる線形累積被害則(マイナー則)は極低サイクル疲労領域では成立せず,危険側の予測結果を与えることが明らかとなった.そこで,損傷力学の概念を用い,塑性損傷と繰返し損傷の和として損傷度を定義することにより,変動ひずみ下における新たな破壊予測モデルを提案した.提案した予測モデルにより,実験により得られた変動ひずみ下での疲労寿命を精度よく予測することが可能となった. さらに,実際の構造物で多用される十字溶接継手試験体に対する疲労試験を行い,溶接止端部のひずみと先に求めた疲労強度曲線により,溶接継手の低サイクル疲労強度が精度よく推定できることを示した.また,提案した変動ひずみ下における強度予測モデルは,溶接継手部に対しても適用可能であることを示した.
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