Research Abstract |
本研究は,流域の流砂環境を修復するための河川技術の中心的な役割を担う土砂流出予測法を確立しようとするものであって,その基礎は本研究代表者が2000年に提案した予測法に基づいている.この方法は,分布型降雨流出モデルと貯留型の流砂モデルから構成されており,流域を構成する河道の任意の地点において流量と流砂量を同時に予測するものである.これは,熊野川本川の十津川風屋ダム流域,その支川の旭ダム流域等でその適用性が検証されているものの,豪雨に伴う山腹斜面の崩壊や土石流によって河道堆積物の条件が大幅に変化するような事象が発生すると,それを挟んだ長期の予測はできない状況にある.そこで,本年度においては,十津川支川旭川,琵琶湖の高時川流域,真名川ダム流域を対象として,山腹崩壊と豪雨との関係,山腹崩壊と河道堆積物の形成機構の関係を検討するとともに,これらを前述の予測法に導入して,土砂流出予測を行い,その一般化を図りつつある.また,山地流域には,多数の砂防ダムが建設されていることから,土砂流出に対するダムの影響を予測法に組み込むことの重要性に鑑み,不透過型の砂防ダムを対象として,土石流の土砂調節機能について理論・実験の両面から検討している.その結果,土石流の土砂濃度等に着目した可能土砂調節量の概念を導入することにより,土砂調節量の評価がかなり一般的にできるようにされている.この成果も上述の予測法に組み込みつつある.以上の研究成果は,業績の項に示すとおりである.
|