Research Abstract |
本研究では,岩盤崩落の危険度評価としてデジタル写真測量の斜面変位計測に対する適用性を把握するとともに,実用するための課題を抽出し,岩盤計測への適用性向上のために必要な技術の高度化を図ることを目的としている,これまでの適用性検討の結果,基本的には変位・変形計測へのデジタル写真測量の適用性は十分あると判断できた.しかし,撮影,解析上の制約を主要因とする次の問題点も指摘された. (1)計測現場には座標既知の固定点,或いは基準点の設置が困難であること (2)或いは基準点を別の技術で計測することによるコストアップや精度の悪化がある 本年度は,変位の原点となる基準点,不動点の設置が困難な現場状況下で変位を検出するための手法開発,及び計測の設計法とその評価の課題について検討した. デジタル写真測量では対象物の相対的形状は正確に測れるが,絶対座標は測れないという原理的な課題がある.すなわち,まったく変位がない場合であっても,その前後の2回の測定で算出される同一点の座標は異なる.その理由は,通常は基準点(予め座標が分かっている点)を置けないからである.このため,座標系を固定しないフリーネットワーク法で解を求める必要があり,上記の問題は避けることができない.本研究では,統計的仮説検定の手法を適用し,定量的に変位の検出を行う方法を構築すると共に,実斜面での実験で有効性を実証した.具体的には,変形前後の2回の測定で得られた座標値を比較するときは,次のように考える提案を行った. ・変形後の形状を,変形前の形状に重ね合わせるように座標変換(回転・平行移動・伸縮)する. ・上記操作を行った後,対応する点の座標の差をとり,この差に対して統計的手法を用いて,変位の有無を判定する. この手法を評価するために,実斜面に対して測点にターグットを貼り,そのうち数点を移動させ,測定し,変位なしの場合と差を取ることによって変位を算出した.
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