2005 Fiscal Year Annual Research Report
原子空孔制御による金属間化合物表面のナノ自己パターンニングと材料機能
Project/Area Number |
16360339
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉見 享祐 東北大学, 大学院・環境科学研究科, 助教授 (80230803)
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Keywords | 金属間化合物 / FeAl / NiAl / 原子空孔 / 自己組織化 / ナノ金微粒子 |
Research Abstract |
本研究では、(1)FeAl単結晶のある特定の表面方位を利用して過飽和熱空孔の凝集プロセスを詳細に観察し、FeAl表面のナノ自己パターンニング機構を解明する、(2)現在申請者によって検討中のアークドロップ溶解プロセスを使って、過飽和熱空孔が利用可能な金属間化合物の探索を行う、(3)一部の金属間化合物に対して、過飽和熱空孔およびその凝集体と材料機能の関連を明らかにし、ナノ自己パターンニングの金属材料学的意義を確立すること等を目的としている。本年度ではまず、Fe-48mol%Al単結晶の{111}表面方位をナノ自己パターンニングさせ、さらに粒径約5nmのナノ金微粒子を含む金コロイドを滴下して、ナノ金微粒子の分散に対する試料表面のナノパターンの影響を調査した。その結果、金コロイド滴下前の試料表面処理としてプラズマクリーニング、さらにアセトニトリルにょる試料表面の溶媒に対する濡れ性の改善、さらにコロイド滴下後の超音波振動が、金微粒子の分散に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。とりわけ、この3手法を適切に組み合わせることによって、ほぼすべてのナノ金微粒子が表面ナノポアーに挿入できた。次いで、Twin-Roll法を用いて、NiAl金属間化合物の急冷凝固薄帯中における過飽和空孔の凝集過程と、その組成依存性を調査した。その結果、NiAl急冷凝固薄帯の格子定数は、強い組成依存性を示した。その値は、過去に報告された水焼入れされたNiAl金属間化合物のものとよく一致しており、過飽和な熱空孔の凍結が示唆された。ところがそれらNiAl急冷凝固薄帯を700℃で10時間、真空中で熱処理を施しても、格子定数の回復はまったく見られなかった。そこで、800℃で10時間、真空中で熱処理を施した結果、47mol%Al以下のNi過剰側でのみ顕著な格子定数の回復が見られた。しかし、48.5mol%Al以上の化学量論組成近傍では、依然格子定数の回復が全く見られなかった。以上のことから、急冷凝固プロセスによって導入された過飽和熱空孔は、侵入型の不純物元素によってトラップされており、その結果格子定数が回復しないと考えられた。このことは、示差走査熱量測定の結果とも良く一致した。
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