Research Abstract |
ウッドセラミックスは,廃木材を原料としフェノール樹脂と複合化して低酸素中での熱処理によって得られる炭素系新素材であり,木質由来の易黒鉛化炭素とフェノール樹脂由来の難黒鉛化炭素から構成される複合炭素材料である.ウッドセラミックスの主な製法には2つあり,一般的には中密度繊維板(MDF)に液状フェノール樹脂を含浸させて乾燥させた後,焼成するMDF法が用いられる.もう1つの方法には,木粉とフェノール樹脂粉を混合後,室温プレスして焼成する粉末法であるが,詳しい研究がほとんど行われていないのが現状である.本研究では,後者の木粉法に重点をおき,木粉とフェノール樹脂粉の混合割合および炭化温度を変化させて,木材由来組織のマクロ孔(マイクロメートルサイズ)とフェノール樹脂炭化時に形成されるミクロ孔(ナノメートルサイズ)の複合化(ハイブリッド)による,新しい機能性を有する多孔質材料を開発することを目的とした. 本年度は,(1)木粉とフェノール樹脂粉の混合割合,焼成条件(温度,雰囲気,真空度)の検討,(2)焼成にともなう試料寸法変化,嵩密度変化,X線的構造変化,比表面積変化,細孔径分布変化,走査電子顕微鏡による外部組織変化の測定をおこなった.得られた主な結果は,次のとおりである. (1)フェノール樹脂粉末の混合割合を10-100%まで変化させ,焼成温度を400-800℃の範囲で変化させて実験を行なったところ,700℃・4h(8kPaの低真空中)の焼成の場合にいずれの試料も最高の比表面積を示し,その比表面積の値はフェノール樹脂粉末量が70%の試料において最高であった.70%を超えると逆に比表面積は低下した.機械的強度,外部形状の観点から,実用的には30%フェノール樹脂粉末試料が最適であると考えられた.700℃での70%,30%フェノール樹脂粉宋試料の比表面積の値は,それぞれ450m^2/g,380m^2/gであった.(2)600℃から700℃での焼成では,0.5nm程度のミクロ孔が増加し,700℃以上の焼成では逆に0.5nm程度のミクロ孔の容積が減少した.(3)X線回折の結果,フェノール樹脂粉末量の多い試料ほど,炭化の開始及び黒鉛化の進行が遅れることがわかった.
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