Research Abstract |
ウッドセラミックスは,廃木材を原料としフェノール樹脂と複合化して低酸素中での熱処理によって得られる炭素系新素材であり,木質由来の易黒鉛化炭素とフェノール樹脂由来の難黒鉛化炭素から構成される複合炭素材料である.ウッドセラミックスの主な製法には2つあり,一般的には中密度繊維板(MDF)に液状フェノール樹脂を含浸させて乾燥させた後,焼成するMDF法が用いられる.もう1つの方法には,木粉とフェノール樹脂粉を混合後,室温プレスして焼成する粉末法であるが,詳しい研究がほとんど行われていないのが現状である.昨年度の実験においては,木粉の樹種として洋材の「紅松」を用いたが,その紅松粉とフェノール樹脂粉を重量比で7:3の割合で配合し,700℃で焼成すると大きな比表面積(350m^2/g)を有する高強度なウッドセラミックスが得られることを明らかにした.さらに,紅松粉とフェノール樹脂粉との重量比を3:7と変化させると,比表面積は450m^2/gへ増加した. 本年度は,さらに比表面積を増加させるために,樹種の検討を行なった.具体的には,広葉樹の「うばめ樫」,「アオダモ」,針葉樹の「松」,「杉」,「檜」および「竹(孟宗竹)」を500-800℃で炭化し,その比表面積をBET法で測定するとともに,X線回折,電気抵抗率測定,密度測定,走査電子顕微鏡(SEM)観察を行った.その結果,「うばめ樫」は,700℃の炭化で比表面積は最高値(350m^2/g)を示し,その後炭化温度の上昇によっても比表面積はほとんど変化しなかった.一方,同じ広葉樹でも「アオダモ」は温度上昇とともに比表面積は増加し続け,800℃での比表面積は450m^2/gと今回の樹種の中では,最高値を示した.針葉樹,竹も炭化温度の上昇とともに比表面積は増大した.800℃での比表面積の順序は,「アオダモ」,「竹」,「松」,「杉」,「うばめ樫」の順であった.また,これら比表面積の値と炭化材の密度とは密接な相関関係があり,密度の低い炭化材ほど比表面積が大きいことがわかった. さらに,木粉法の応用として,木粉の代わりに「使用済みのハガキ」を解繊してフェノール樹脂を含浸して後,プレスして炭化した「ペーパーセラミックス」の比表面積は,700℃炭化で約450m^2/gと従来の木粉法ウッドセラミックッスより高い比表面積を示すことがわかった.
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