Research Abstract |
半導体シリコン単結晶成長を支配するのは熱物質輸送過程であり,その要素の一つに融液マランゴニ対流があることが宇宙実験を通じて明かにされたが,詳細は十分に解明されていない.半導体シリコン融液は,金属性融液であり,取り扱いが困難である.そこでシミュレーションや,低融点金属を利用した研究が行われているが,マランゴニ数の低い領域(低速度)に限られており,実際の結晶成長で問題となる高マランゴニ数領域(高速度,乱流域も含む)の挙動は解明されていない. 高マランゴニ数領域のシリコン融液のマランゴニ対流を実験的に解明するために,液柱形状の試料を準備し,その底部に周方向に6本の熱電対を挿入し温度振動を調べた.複数の熱電対によって計測された温度振動の時間依存性から,温度場非対称性の時間的挙動が明かになった.例えば,3回対称の温度場を示すm=3モードでは,3回対称温度場がパルス的に振動している.m=1モードでは1回対称温度場は周方向に回転しているように見える.さらに,生成する振動モードが,どのような形状比(高さと半径との比)において頻度高く出現するのか,また,m=1やm=3モードにおける振動が,観測されるどのような周波数に対応するのかを,wavelet変換を用いて明かにした.乱流域においても,低マランゴニ数領域で報告されている,形状比Asとモード波数mとの関係As・m=2は,基本的に満たされていることが明かになった.さらに,モード波数と周波数との関係は,m=1ではf=0.08-0.2Hz,m=3ではf=0.01-0.2Hzにあることが,明かになった。 マランゴニ数を小さくすることが困難な,液柱構造を有するシリコン液柱において,低マランゴニ数を実現するための方策として部分自由表面構造の採用を提案している.部分自由表面液柱構造の場合,開口部の位置(低温側,あるいは高温側)によって,定常流から非定常流へのモード遷移の様子が異なることが,計算機シミュレーションから明かになった.また,表面での剪断力以外に,液柱内部での回転による遠心力も不安定化の原因として示唆される.
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