Research Abstract |
本研究で開発するカプセル膜触媒は一般の触媒上に,ゼオライトなどの固体酸触媒等の膜を調製し,通常は2段階反応で行う必要のある反応を一段階で行うことのできる触媒である。本年度はフィッシャー・トロプシュ合成(FT合成)触媒をベース触媒とし,カプセル膜触媒の開発を行った。FT合成は合成ガス(水素と一酸化炭素の混合ガス)から液体燃料を作る反応である。生成する重質液体燃料は,セタン価は高いが,オクタン価が低いため,ガソリンを製造するにはFT反応の後,生成物を分離して改質反応を行う必要がある。しかしカプセル膜触媒を用いると,生成する炭化水素は反応中に固体酸触媒上で分解・異性化を受け,生成物も軽質化しガソリンに相当する液体燃料が生成する。反応条件を制御することにより,LPGも選択的に合成できる。すなわち通常は2段階反応が必要なガソリン製造が,一段階反応で行うことができるため,カプセル型触媒の性能を確かめるよい反応である。 FT合成触媒としてCO/SiO2触媒を用い,ゼオライト(ZSM-5)膜を調製した。24時間以上膜調製を行うことにより,ゼオライト膜が生成し,膜圧は5μmであった。CO/SiO2触媒でFT反応を行うと,CO転化率は98%と高く,C22程度までの直鎖の重質炭化水素が生成した。ゼオライトで皮膜したFT触媒ではCO転化率は85%と少し低くなったが,生成物は軽質化し,C10までの炭化水素しか生成しなかった。また生成炭化水素には多くの分枝炭化水素が生成し,分枝炭化水素と直鎖炭化水素の比は最高で1.88となり,ガソリン留分に相当する炭化水素が生成した。 本年度の研究からカプセル型触媒は,予想されたような優れた反応特性を持つことがわかった。
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