2006 Fiscal Year Annual Research Report
バイオフイルム形成初期過程の制御に向けた細菌付着のナノメカニズムの解明
Project/Area Number |
16360409
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
堀 克敏 名古屋工業大学, 工学研究科, 助教授 (50302956)
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Keywords | オートトランスポーター / アドヘシン / 細菌ナノファイバー / 細胞接着 / バイオフィルム / Acinetobacter / ピリ |
Research Abstract |
高付着性細菌Acinetobacter sp.Tol5は、付着に関わる粘着蛋白質として、三量体型オートトランスポーターアドヘシン(TAA)を有していることを遺伝子解析より明らかにした。Tol5のTAAとして下記の特徴を明らかにした。 (1)約290kDaもの分子量を持つ非常に巨大なポリペプチドから成る。 (2)既報のTAAと、シグナルペプチド、ヘッド、ネックの部位は30〜40%の相同性を有し、特に歯周病菌の持つものとの相同性が一番高い。しかし、ストーク部位の相同性はほとんどない。 (3)既報のTAAは病原性細菌が有するもので、ホスト細胞やコラーゲンやフィブロネクチンなどのECMなどに対し特異的に付着するのに対し、Tol5のTAAはプラスチックなど、非生物表面に非特異的に、しかも強力に付着する。 一方、Tol5株は、粘着蛋白質としてTAA以外にタイプIピリを有することを、表層蛋白質の解析から明らかにした。この蛋白質の発現量は、TAAの構造遺伝子の破壊により著しく低下することから、TAAの発現によってタイプIピリの発現が正に制御されていることが示唆された。Tol5細胞が有する二種類の粘着ナノファイバーのうち、周毛性繊維がタイプIピリであり、アンカーがTAAである可能性が高い。しかし、これらナノファイバーが伸長している様子を電子顕微鏡で捉えることに成功した結果、アンカーは3μm以上にもなることが明らかとなり、既報のTAAの高次構造では、アンカーの構造を説明できないことも示された。Tol5の粘着蛋白質は、全く新しい高次構造をとるユニークな粘着蛋白質であると思われる。
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