2005 Fiscal Year Annual Research Report
長期モニタリングと個体群統計遺伝学による植物個体群の存続可能性の評価と保全
Project/Area Number |
16370007
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大原 雅 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 教授 (90194274)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 岳 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 助教授 (30221930)
和田 直也 富山大学, 理学部, 助教授 (40272893)
高田 壮則 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 教授 (80206755)
|
Keywords | 長期モニタリング / 個体群 / 統計遺伝学 / 多年生植物 / 存続可能性 / 保全 |
Research Abstract |
2年目に当たる平成17年度は、これまで各研究者が行ってきた対象植物に関する長期モニタリングを継続するとともに、繁殖特性および個体群の遺伝的構造に関する調査を行った。具体的に得られた成果の概要は以下の通りである。 1.開花時期の異なるキバナシャクナゲ個体群間で、花粉媒介者の行動が自殖率と花粉親の多様性に及ぼす効果について、マイクロサテライトマーカーによる遺伝解析を行った。開花の早い風衝地個体群では、蜜を採餌する女王マルハナバチの訪花を受け、他殖率が高かった。一方で、開花の遅い雪田個体群では、花粉を集める働き蜂の頻繁な訪花を受け、隣花受粉に伴う自殖率が高いが、他殖種子の花粉親多様度は高かった。また、個体群内の開花時期変異が空間遺伝構造に及ぼす効果をエゾコザクラ個体群でアロザイムを用いて解析した。 2.スズランに関して、種子繁殖ならびにクローン成長を通じた繁殖特性に関わる調査を行った。野外集団における人工交配実験の結果、同一クローン内の花序間の受粉ではほとんど種子は結実せず、異なるクローン間で種子結実が認められた。また、種子結実率は近隣にある和合花粉を持つ異なるクローンの花数により大きく左右されることも明らかになった。従って、クローン成長の程度は、花粉媒介者を誘引する花密度に影響を及ぼし、和合花粉の供給効率、ひいては種子繁殖を通じた個体の繁殖成功に影響を及ぼすことが明らかになった。 3.ヒメザゼンソウに関して、富山県猪谷の個体群を対象に、気温、地温、光強度の測定を実施し、生育環境を把握するとともにサイズ構造や繁殖状況を調査した。その結果、実生の新規加入個体が少ないこと、果実の被食率が高いことなどが分かった。また、3つの分集団を対象に11酵素15遺伝子座について酵素多型分析を行ったところ、5つの遺伝子座で酵素多型が検出された。
|
Research Products
(6 results)