2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16370008
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西村 欣也 北海道大学, 大学院水産科学研究院, 助教授 (30222186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 司 日本大学, 生物資源学部, 助教授 (60241379)
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Keywords | 形質可塑性 / 誘導防御 / 形態発生 / エゾアカガエル / 地理的隔離 / 捕食圧 / 自然選択 |
Research Abstract |
エゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)幼生は、適応的形態可塑性を示し、形質可塑性の進化を研究する上で優れたモデル生物系である。エゾサンショウウオ幼生は、エゾアカガエル(Rana pirica)のオタマジャクシを捕食するために、必要に応じて頭でっかち形態を発現する臨機応変な形態発現能を有している。頭でっかち形態が誘導的で常備的でないことに適応的意味があるのならば、頭でっかち形態発現にまつわる何らかのコストがあるはずである。 エゾサンショウウオ幼生は、オタマジャクシの捕食に専心するわけには行かない。サンショウウオ幼生は水溜り・池の生物群集のなかで、上位捕食者からの捕食危機に対処しなければならない。捕食攻撃に適した頭でっかち形態を発現したサンショウウオ幼生は、上位捕食者の攻撃に対する防御能力が下がる、機能コストを負っているかもしれない。 基本形態のサンショウウオ幼生と、頭でっかち形態のサンショウウオ幼生を同数、ヤゴに自由に狩らせ、生存成績を調べた。頭でっかち形態のサンショウウオ幼生は、基本形態のサンショウウオに比べ、ヤゴによって容易に捕食されてしまった。頭でっかち形態のサンショウウオ幼生は、ヤゴに攻撃を受けたときに、危険圏内から敏速に泳ぎ去るための遊泳速度が遅いことが分かった。頭でっかち形態は、捕食者から逃れる機能を低下させている。この負の効果は、頭でっかち形態を、常備的に保持する個体に対して自然選択の上で不利に作用する。頭でっかち形態が不必要な場面や不利に働く場面では、頭でっかち形態は発現せず、必要な場面で発現する誘導デザインは、水溜り・池の食物網の中でサンショウウオ幼生にとって優れた機能を果たしていると思われる。
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Research Products
(4 results)