2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16370039
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
堀口 健雄 北海道大学, 大学院理学研究院, 助教授 (20212201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 攻 広島大学, 大学院生物圏科学研究科, 教授 (00176934)
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Keywords | 渦鞭毛藻 / 寄生 / 動物プランクトン / 分子系統 / Marine Alveolate Group I / 生物多様性 / Duboscquella |
Research Abstract |
本研究は、主に我が国沿岸の寄生性渦鞭毛藻類の多様性を明らかにし、その進化過程を解析することを目的としたものである。特に有鐘繊毛虫類に寄生するDuboscquellaの形態観察と系統的位置を明らかにしたことが今年度の大きな成果である。材料は、石狩湾、浜名湖、倉敷から採集した。SSU rDNA配列では石狩湾産と残り2カ所からの間には7.6%の塩基置換が認められた。これら2種の系統的位置をアルベオラータ全体で解析したところ、Marine Alveolate Group I(MAG-I)と呼ばれるクレードに位置した。このクレードは2001年に初めて認識された大きなクレードで、全て5μm以下の海水フラクションの環境DNAから得られたクローン配列であり、どのような生物がこのクレードに含まれるかは全く謎であった。また一般にアルベオラータの生物は大型であることからこのようなピコ/ナノサイズの生物が海洋中に広く分布していることは驚きでもあった。本研究で初めて実体をもった生物がこのクレード内に同定された。形態や生活環の観察から本種は5μm以下の微小な遊走細胞を大量に形成することが明らかになり、環境DNAで捕捉された生物の起原はこれら微小な遊走細胞である可能性が強く示唆された。最近、MAG-Iには放散虫類の寄生生物も含まれることが明らかにされた(Dolven et al. 2007)が、彼らの配列はDuboscquellaとは異なる系統的位置を示すことから、このMAG-Iは色々な寄生生物から構成される可能性が高くなった。MAG-Iの環境クローン配列が世界中の様々な環境の海洋から見つかることは、世界中の海が大量の寄生性生物の遊走細胞で満ちあふれていることを意味し、本研究は海洋における寄生性生物の遊走細胞の生態的重要性という新しい視点をもたらしたことになる。
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Research Products
(6 results)