2005 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア弧状列島におけるクロショウジョウバエ区の種分化と多様性維持機構の研究
Project/Area Number |
16370040
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
渡部 英昭 北海道教育大学, 教育学部札幌校, 教授 (10167190)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸田 正憲 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (40113592)
青塚 正志 首都大学東京, 都市教養学部, 助教授 (40106604)
並川 寛司 北海道教育大学, 教育学部札幌校, 助教授 (90192244)
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Keywords | クロショウジョウバエ区 / robusta species group / malanica species group / quadrisetata species group / 地理的分布 / 東アジア / 分子系統樹 / 生殖的隔離 |
Research Abstract |
前年度に引き続き日本列島の異なった植生帯でクロショウジョウバエ区の地理分布を調べた。特筆すべきことは,quadrisetata種群に属する新種の発見である。本種は南中国広東省で記載されているDrosophila potamophilaと近い系統関係に位置することが生殖器構造等の形態観察とミトコンドリアND2,COI遺伝子の解析から明らかにされた。この新種の北限は暖温帯林(京都芦生)までと思われるが,南西諸島や台湾を含む広域分布の可能性がある。さらにangor種群に属する新種が南西諸島から得られた。本種の系統関係に関しては現在分析中であるが,南中国雲南省で発見されている新種と同じ可能性がある。 野外生態調査では,rubusta種群okadai亜群3種,lacertosa亜群1種,virilis種群1種,polychaeta種群1種の繁殖物質を特定することができた。渓流に浸っている樹皮(生きている樹木)およびゼリー状の樹液から多数の3齢幼虫と蛹が発見された。Drosophila okadai, D.neokadai, D.ganiの幼虫ではposterior horn(後呼吸管),siphonal tubercle(呼吸管突起)が,蛹ではanterior horn(前呼吸管)ともに極めて良く発達していた。これらはほとんど水中に浸っている繁殖物質で生活するための適応形質と考えられる。昨年度の微小分布,休息場所,摂食行動に加えて繁殖物質とその状況が詳細に分かったので,これまで累代飼育が不可能であったクロショウジョウバエ区の4種について,新しい飼育方法を考案した。容積1000mlのスクリュー瓶の下部に蒸留水を入れ高湿度を維持し,瓶蓋に直径30mmの穴をあけて遠沈管を挿入する。遠沈間の下部に飼育培地を入れ,側面にはショウジョウバエが出入り可能な窓をあけた。この結果,通常の飼育管瓶では1週間程度しか維持できなかったDrosophila okadai, D.neokadai, D.ganiを約2ヶ月維持することが可能となった。3種から染色体核型の詳細な分析,近縁種間での生殖的隔離機構の研究が可能となった。 中国南西部貴州省の"Drosophila tsigana(melanica種群)"と思われた種は別種としなければならないことが生殖的隔離機構の研究,形態観察,核型比較から明らかになった。本種はミャンマーから報告されているD.bisetataと,同様にD.longiserrataはD.aferと同種の可能性がある。
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Research Products
(2 results)