2006 Fiscal Year Annual Research Report
針葉樹進化の一般的特性及びその適応進化についての集団遺伝学的研究
Project/Area Number |
16370101
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Research Institution | KYUSHU UNIVERCITY |
Principal Investigator |
舘田 英典 九州大学, 大学院理学研究院, 教授 (70216985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津村 義彦 森林総合研究所, 森林遺伝研究領域, 室長 (20353774)
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Keywords | 針葉樹 / 遺伝的多様性 / 集団遺伝学 / 適応的変異 / 自然淘汰 / ヒノキ科樹木 / R遺伝子 / クロロフィル合成酵素 |
Research Abstract |
針葉樹遺伝子進化の一般的性質を明らかにするとともに、適応進化が起こったと考えられる候補遺伝子や、多重化を伴うと考えられる耐病性遺伝子を詳しく解析することにより、世代の長い生物でどのように適応進化が起こっているかを解明することを目的として、次の研究を行った。(1)ヌマスギ(Taxidium distichum)の二亜種bald cypressとpond cypressの天然林からMiddleton博士(海外研究協力者)によって採集された種子由来のDNAサンプルについて、塩基配列多型を核10遺伝子座で調査した。その結果、1)ヌマスギが全体としてスギに較べて高い遺伝的多様性を持ち、2)スギ集団が長期的に減少傾向に有るのに対し、ヌマスギでは増加傾向が有ること、3)10遺伝子座中2遺伝子座で二亜種間に有意な分化が見られるが、その他の8遺伝子座では分化が見られないこと、がわかった。(2)耐病性遺伝子の一つであるR遺伝子のホモログ(NBS-LRRタイプ)について、スギ及びヌマスギの集団において塩基配列多型を解析した。その結果、この遺伝子は両種において2から4コピーに重複しており、またスギ集団において全領域で非同義塩基多様度が同義塩基多様度の約3倍となっていることがわかった。更にNBS・LRR領域間で組換えも起こしており、病原体との競合で強い自然淘汰の影響を受け、この遺伝子座では多様な塩基配列を進化させていることが示唆された。(3)スギで多数の(約150)CAPSマーカーを使ってゲノムワイドなサーベイを行い、スギの天然林での集団間分化を推定するとともに、ウラスギ-オモテスギの分化に関与している可能性の有る適応候補遺伝子を見いだした。
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