Research Abstract |
本研究では,世界中で東アジアにのみ分布するオオムギ半矮性系統‘渦'について,(1)渦系統の系統分化,(2)子葉鞘の突起およびdm型節間伸長等の渦性特異的な形態特性の多様性,および(3)渦系統の再分化特性の多様性について,分子マーカーを使った系統解析や,渦系統特異的な表現型の遺伝解析・生理解析等を実施し,渦性変異の起源に関する分子レベルの知見を得ると共に,渦系統が持つ形態的・生理的多様性に関わる遺伝子座の検出を目的とする.今年度は,(1)〜(3)について,次のような解析を実施した. (1)HvBRI1遺伝子が座乗するBAC1クローンの配列を決定した.その結果,HvBRI1遺伝子周辺にはレトロトランスポゾン様配列が数多く存在していることが判明した.現在これらを用いて系統解析に用いる分子マーカーを作製中である. (2),(3)子葉鞘の突起およびdm型節間伸長の出現頻度とその発現の温度反応について表現型が異なる系統を10系統選抜し,ダイアレル分析に供試している.さらに,これらの形質のQTL解析を実施する目的で6交配組み合わせのF_2集団を育成し,連鎖地図構築と後代での形質調査を進めている.又,並・渦性の同質遺伝子系統を用いてオーキシン・サイトカイニンに対する応答性を調査している.今年度は,未熟胚を培地上で発芽させた際に観察される子葉鞘の突起に着目し,培地中のオーキシン,サイトカイニンが与える影響を調査した.その結果,渦系統を高温で発芽させた際に特異的に観察される子葉鞘の突起が,オーキシン,サイトカイニンを与えることで部分的に再現されることを見出した.組織切片の観察から,この渦系統で特異的に見出される突起は,異所的な細胞分裂の活性化によって起こる可能性が考えられた.現在,オーキシン・サイトカイニン応答性遺伝子の発現量を定量PCRにより解析し,子葉鞘の形態変化との関連について調査している.
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