Research Abstract |
単子葉花き園芸植物における形質転換技術を用いた花形の改変を目的として,本年度は以下の項目について検討した. (1)MADS-box遺伝子の単離 前年度に引き続き,数種のユリ科花き園著植物(アガパンサス,ムスカリ,ヤマジノホトトギス,オオバナノエンレイソウなど)から花器官形成に関するMADS-box遺伝子を単離し,発現解析を行った.それらの遺伝子のうち,オオバナノエンレイソウから単離した花成制御に関与すると考えられるSOC1/TM3-like遺伝子(TrcMADS1)については,花だけでなく栄養器官でも発現していることが確認された.この結果から,原始的な植物のSOC1/TM3-like遺伝子産物が栄養器官と生殖器官の両方で機能を有していた可能性が示された. (2)cycloidea・dichotoma相同遺伝子の単離 2種類のアルストロメリア(Alstromeria aureaおよびA.pelegrina var.rosea)から花の相称性に関与する4種類のcycloidea相同遺伝子を単離した.現在,RT-PCRおよびin situハイブリダイゼーションにより,これらの遺伝子の発現解析を行っている.また,既知のcycloidea相同遺伝子を用いて系統樹を作成し,類縁関係の解析を試みている.さらに,ブラジル産のアルストロメリア(A.psittacina)を用い,cycloidea相同遺伝子の一部の配列を決定した. (3)形質転換システムの構築 前年度に引き続き,数年間栽培したアガパンサスおよびホトトギスの形質転換体における外来遺伝子(GUS遺伝子)の発現解析を行い,これらの植物において外来遺伝子が長期的・安定的に発現することを確認した.また,形質転換の際にアグロバクテリウムを接種する材料として用いるために,多数の種・品種のユリ属植物において植物体再生能力を保持したカルス培養系を確立した. (4)MADS-box遺伝子を用いた形質転換 アガパンサス由来のBクラスMADS-box遺伝子が導入されたアガパンサスおよびホトトギスの形質転換体を作出した.また,ヤマジノホトトギス由来BクラスMADS-box遺伝子が導入されたホトトギスの形質転換体を作出した.さらに,現在,ムスカリ由来BクラスMADS-box遺伝子を用いたムスカリの形質転換を行っている.
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