Research Abstract |
クリ樹(‘国見')の各器官における,ニホングリレクチン(CCA)発現の年次変動を調べたところ,根の木部,一年枝の木部及び葉において,5,6月に発現を認めた。また,雌花の総包とそれが生長したイガ,及び雄花の花糸,花床で発現を認めた.従って,CCAは,栄養体貯蔵タンパク質(VSP)で一般に見られるように,若い組織において発現していることが明らかになった.これに対して根の皮,前年枝及び一年枝の樹皮では,年間を通じて発現は認められなかった.一方休眠期の木部において,28kDa,15kDaのタンパク質の蓄積を認め,これらが休眠の指標タンパク質となり得ると考えられる.配列分析の結果,後者はSODであることが明らかになった.前者については末端配列を読めず,現在単離を試みている. 遺伝子構造の解析については,degenerate-primerを用いたPCR-Southern解析の結果,ニホングリのゲノムには本来のCCAとは別に,単一ドメインレクチンに相当する遺伝子の存在を確認している.それぞれに特異的なプライマーを設計し,上述の発現を認めた器官について,RT-PCRを行った.その結果,種子以外の器官では,単一ドメインに該当するシグナルを得た.この配列を解析した結果,これまでイントロンと推定していた部分も転写されていた。即ち,実際のゲノムは,推定しているより大きなものであると考えられる.現在RACE法を用いて,単一ドメインと考えられるcDNAの解析を試みている. 一方,生理機能を考察する上で,糖に対する特異性の解析は不可欠である.そこで単糖,オリゴ糖に対する結合特性をELLAを用いて解析した.その結果,CCAはN-結合型biantnenary構造,特にその基本骨格である,Manα1-3[Manα1-6]Manを強く認識し,推定結合部位は一ヶ所もしくは等価な二ヶ所であることが明らかになった.
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