Research Abstract |
クリ樹(‘国見')の各器官における,ニホングリレクチン(CCA)発現の年次変動を再度調べたところ,前年と同様の結果が得られ,外的要因に影響を受けない,本質的な変化であることが確認できた.28kDaタンパク質の変動にも再現性を認め,休眠関連タンパク質の一つとして,現在クローニングを試みている.低温遭遇時の変動では,7℃以下,約600時間経過時に,木質部において総タンパク質含量の著しい変化を認めた.現在プロテアーゼ活性の変動も解析中である.また,CCAの栄養体貯蔵タンパク質としての役割を明確にするため,窒素施肥の効果を観た.その結果,20mM硝酸アンモニウムの施肥により,葉においてCCAの蓄積を認めた. アイソレクチンの有無については,既報の配列にグルタミン1残基が挿入されたisoform(CCA-Q)の存在を確認した.CCAとCCA-Qは同一遺伝子(CCA)にコードされており,イントロンのスプライシング部位の相違に基づくことを明らかした.一方,単一ドメインCCAに該当するcDNA(LECsCCA)の塩基配列を解析したところ,1214bpからなり,CCAのイントロン領域も転写されており,明確な翻訳領域は存在しなかった.したがってLECsCCAは,non-coding mRNAであると考えられる.このLECsCCAは,CCAの発現している器官全てにおいて検出できた.現在,その機能について解析中である.一方,LECsCCAをCCAとの相同性に基づき,4塩基ずれた位置にイントロンが存在すると仮定すると,155残基が翻訳されることになり,この配列はジャッカリン近縁レクチンと相同性を示した.2つのドメインからなるCCAが,遺伝子重複による産物か,逆に単一ドメインレクチンの祖先に該当するかの手がかりを得るため,この仮想単一ドメインCCAの発現を試みている.
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